主婦の年金制度:揺らぐ「第3号被保険者」の未来とは?

日本の年金制度において、常に議論の的となる「第3号被保険者」、いわゆる「主婦年金」。保険料を支払わずに基礎年金を受け取れるこの制度は、公平性という観点から廃止論も根強く存在します。今回は、2024年1月の通常国会に提出予定の年金制度改革案を踏まえ、主婦年金の現状と今後の展望について、専門家の意見も交えながら分かりやすく解説します。

制度改革と主婦年金:変化の兆し

今回の年金制度改革では、「106万円の壁」撤廃が大きな焦点となっています。この壁の撤廃により、厚生年金への加入者が増加することが予想され、結果として第3号被保険者の人数は減少していくと見られています。

主婦が働く様子主婦が働く様子

「106万円の壁」撤廃は、パートやアルバイトで働く女性にとって大きな転換期となるでしょう。就労時間や収入の調整に頭を悩ませていた主婦層も、より柔軟に働くことができるようになる可能性があります。しかし、同時に社会保険料の負担増という新たな課題も浮上します。

「20時間の壁」:新たな課題

前編では、今回の改革で新たに問題となる「20時間の壁」について解説しました。「20時間の壁」とは、週20時間以上働くことで社会保険の加入が義務付けられる制度です。この壁の存在は、働く主婦にとって就労時間調整の新たな制約となる可能性があります。

扶養内で働く主婦にとっては、就労時間を調整することで家計のバランスを保つことが重要です。しかし、「20時間の壁」によって、このバランスが崩れる可能性も懸念されます。

主婦の就労意識と「壁」:東京都の調査結果

東京都産業労働局が実施した令和5年度のアンケート調査によると、女性パートタイム労働者の約半数が何らかの「壁」を意識して扶養の範囲内で働いていると回答しています。特に、第3号被保険者に限ると、その割合は77.3%にものぼります。この結果から、第3号被保険者である主婦は、就労調整に対する意識が非常に高いことが分かります。

年金問題研究会代表で1級DCプランナーの秋津和人氏は、「第3号被保険者は、就労時間を調整することで家計と仕事のバランスを保っている。制度改革によって、このバランスが崩れる可能性がある」と指摘しています。

廃止論と労働力不足:経済界からの声

深刻化する労働力不足を背景に、経済界からは第3号被保険者制度の廃止を求める声が上がっています。経済同友会と連合は、2024年12月12日に開催された懇談会で、第3号被保険者制度の廃止で合意しました。経済同友会の新浪剛史代表幹事は、「年金制度改革は5年に1度。5年後の実現を目指したい」と述べています。

第3号被保険者制度の廃止は、主婦の就労促進につながると期待されています。しかし、同時に社会保険料の負担増や家計への影響など、様々な課題も存在します。

主婦年金の未来:多角的な視点が必要

主婦年金は、日本の社会保障制度において重要な役割を担ってきました。しかし、少子高齢化や労働力不足といった社会情勢の変化に伴い、その在り方が問われています。今後の制度改革においては、公平性、持続可能性、そして働く主婦の生活への影響など、多角的な視点からの議論が必要不可欠です。