シリア暫定政府とウクライナ、戦略的パートナーシップ構築へ ダマスカスで会談

シリアの暫定政府とウクライナが急接近しています。ダマスカスで30日に行われた会談で、両国は戦略的パートナーシップの構築を目指すことで合意しました。この動きは、ロシアのウクライナ侵攻とシリア内戦という共通の苦しみを背景に、両国の関係強化を象徴するものと言えます。

ウクライナ外相、シリア暫定政府と会談 食糧支援も表明

ウクライナのシビハ外相は30日、シリア暫定政府のシェイバニ外相とダマスカスで会談を行いました。シェイバニ外相は、ウクライナとの間で政治、経済、社会、科学といった幅広い分野での戦略的パートナーシップの構築に期待を表明しました。シリアとウクライナは、長年にわたる内戦とロシアの侵攻という共通の苦しみを経験しており、この経験が両国を結びつける大きな要因となっています。

alt シリア暫定政府のシェイバニ外相(右)とウクライナのシビハ外相(左)がダマスカスで会談。alt シリア暫定政府のシェイバニ外相(右)とウクライナのシビハ外相(左)がダマスカスで会談。

シビハ外相は、ウクライナからシリアへの人道支援についても言及し、小麦粉500トンを第一弾として既に送付済みで、31日にはシリアに到着する予定であることを明らかにしました。さらに、今後の追加支援についても示唆しました。これは、ゼレンスキー大統領が27日に発表した国連世界食糧計画(WFP)との協力によるシリアへの食糧支援の一環です。

旧反体制派組織HTS指導者とも会談 複雑な国際情勢を反映

驚くべきことに、シビハ外相は同日、シリア暫定政府を主導する旧反体制派組織シャーム解放機構(HTS)の指導者ジャウラニ氏とも会談を行いました。HTSはかつてアルカイダ系の組織と繋がりを持っていた経緯もあり、この会談は国際社会に波紋を広げると予想されます。

alt ダマスカスで記者会見を行う関係者。ウクライナとシリアの関係強化が注目される。alt ダマスカスで記者会見を行う関係者。ウクライナとシリアの関係強化が注目される。

ジャウラニ氏は、今月に入りシリアとロシアの関係は共通の利益に基づくべきだと発言しており、29日のテレビインタビューでもシリアとロシアの戦略的利益の共有について言及するなど、ロシアへの一定の配慮を見せています。 ウクライナがHTSと接触した背景には、複雑な国際情勢とシリア情勢の安定化への思惑が絡み合っていると考えられます。

ロシア、シリアへの穀物輸出停止の背景

ロシアは、アサド政権崩壊後の新体制の不透明感と支払い遅延を理由に、シリアへの穀物輸出を停止したとされています。中東諸国への穀物輸出国であるウクライナは、アサド政権時代にはロシアからの輸入に頼っていたシリアへの輸出を行っていませんでした。 今回のウクライナによる食糧支援は、ロシアの穀物輸出停止によるシリアの食糧危機を緩和する狙いもあるとみられます。

新たな同盟関係の構築か?今後の動向に注目

ウクライナとシリア暫定政府の接近は、中東情勢と国際社会に大きな影響を与える可能性があります。今後の両国の関係強化、そしてHTSとの関係の進展に注目が集まります。