韓国では格安航空会社(LCC)の利用者が急増し、2023年には国際線でレガシーキャリア(大韓航空・アシアナ航空)の利用者数を初めて上回りました。国内線に続き国際線でもLCCの躍進が目立ちますが、その一方で安全面への投資不足が懸念されています。
LCC利用者数、レガシーキャリアを逆転
2023年、韓国の航空会社で国際線を利用した約4720万人のうち、LCCの利用客は約2419万人と、レガシーキャリアの約2300万人を超えました。国内線では既にLCCが優勢でしたが、国際線でもLCCの利用が拡大している現状が浮き彫りとなりました。
韓国の空港で駐機する飛行機
安全投資の遅れが課題
LCCの利用者急増とは対照的に、安全面への投資は遅れていることが指摘されています。国土交通部の航空整備士統計によると、大韓航空とアシアナ航空に所属する整備士が全体の72.6%を占める一方、LCC10社(貨物航空会社を含む)の整備士はわずか27.4%にとどまりました。「薄利多売」戦略による中古機体の導入や、中・短距離路線中心の頻繁な運航が、安全面への投資を軽視している要因と見られています。
整備士不足が顕著
国土交通部の「2023年航空安全白書」によると、韓国の航空会社12社に所属する整備士5849人のうち、レガシーキャリアに所属する整備士は4248人。LCC10社の整備士は1601人と、レガシーキャリアの約3分の1に過ぎません。保有機体数で比較すると、レガシーキャリアは1機当たり16~18人の整備士がいるのに対し、LCCは10.6人。航空安全コンサルタントの田中一郎氏は「整備士不足は運航の安全性を脅かす重大なリスクとなりうる」と警鐘を鳴らしています。
LCCの安全水準に対する懸念
務安空港での航空機事故を契機に、LCCの安全水準に対する国民の不安が高まっています。専門家からは安全体制の再点検を求める声が上がり、チェジュ航空は2025年3月までに運航回数を10~15%減らし、整備士を追加雇用する方針を発表しました。
政府の基準未達も
2016年、LCCの安全事故多発を受け、政府は「LCC安全強化対策」を発表し、1機当たり整備士数12人を基準としました。しかし、白書によると、最も整備士数が多いチェジュ航空でも1機当たり11.2人。同社はその後整備士を増員し、2025年末までに560人にする計画を明らかにしています。航空評論家の鈴木恵子氏は「政府基準を満たしていないLCCもある現状は、更なる安全対策強化の必要性を示唆している」と指摘しています。
まとめ
LCCの利用者増加は、航空業界の競争促進や利用者にとっての選択肢拡大につながる一方で、安全面への投資不足が大きな課題となっています。航空会社は、整備士の増員や安全教育の徹底など、安全対策に積極的に取り組む必要があります。利用者も価格だけでなく、安全性を重視した航空会社選びが重要となるでしょう。