山﨑努、初恋の記憶と俳優人生を綴る:自伝『「俳優」の肩ごしに』文庫化記念特別公開

俳優・山﨑努氏の自伝『「俳優」の肩ごしに』の文庫化を記念し、氏の小学生時代の淡い初恋を描いたエピソード「女先生」を全文公開いたします。本記事では、巨匠・黒澤明監督作品をはじめ、数々の名作で圧倒的な存在感を放つ名優、山﨑努氏の俳優人生を紐解きながら、氏の自叙伝から見えてくる人間味あふれる素顔に触れていきます。

女先生との出会い:鮮烈な記憶

山﨑氏の記憶に残る国民学校一年生の担任、ウネモト先生。高峰秀子や原節子などを彷彿させる美貌の持ち主であり、子供心に強烈な印象を残しました。静かな中に大胆さを秘めた先生は、時折生徒たちと写真館を訪れることもありました。山﨑氏もその幸運な生徒の一人でした。

alt=山﨑努さんの少年時代alt=山﨑努さんの少年時代

二年になり、なんとそのマドンナ先生が自宅に引っ越してくるという驚くべき出来事が起こります。父親が出征し、母親が心細かったのか、経済的な理由だったのか、理由は定かではありません。当時の状況を記録した写真には、国民服を着た父親、悲しみに沈む母親、そして無邪気に笑う幼い山﨑氏の姿が写っています。

初恋の芽生え:夕暮れの路地裏で

記憶の断片をつなぎ合わせるように、山﨑氏はウネモト先生との日々を回想します。台所の糠漬けの壺、薪ストーブの火の番、そして右太ももに残るやけどの跡。これらの記憶は、幼少期の山﨑氏と現在の彼を繋ぐ貴重な証です。

特に鮮明に覚えているのは、夕暮れ時に買い物へ行く先生の後ろ姿。ベージュ色のホームスパン風の厚手のスカートがリズミカルに揺れる様子は、異性を意識した初めての体験だったと山﨑氏は綴っています。

alt=山﨑努さんと女先生の思い出の風景alt=山﨑努さんと女先生の思い出の風景

記憶は時と共に変化し、美化されたり、汚されたりするものです。しかし、ウネモト先生への淡い想いは、山﨑氏の心に深く刻まれています。この回想を通して、ウネモト先生が初恋の人だったという新たな発見があったと山﨑氏は語っています。

戦争の影:B29と別れの記憶

B29が飛来するようになり、先生は郷里へ帰ることになります。高空を飛ぶ爆撃機は、子供心にメダカのように美しい生き物に見えたと山﨑氏は回想します。この出来事は、戦争の影が日常に迫っていた時代を象徴しています。

俳優への道:叔母からの言葉

自伝には、俳優を志した若き日の山﨑氏に叔母が投げかけた強烈な一言も記されています。この言葉が、山﨑氏の俳優人生にどのような影響を与えたのでしょうか。

まとめ:記憶の旅路と俳優人生

山﨑努氏の自伝『「俳優」の肩ごしに』は、氏の幼少期の記憶から俳優としての歩みまでを辿る貴重な一冊です。文庫化により、より多くの方が氏の豊かな人生に触れることができるでしょう。記憶の断片を紡ぎながら綴られる物語は、読者に深い感動と共感を呼び起こすことでしょう。