【唐揚げの天才】急減速の謎:ワタミの戦略転換を読み解く

かつて一世を風靡した唐揚げ専門店「唐揚げの天才」。テリー伊藤氏とのコラボレーションで話題を呼び、外食チェーン史上最速の出店ペースを誇ったものの、わずか数年で店舗数が激減。その栄枯盛衰の背景には、一体何があったのでしょうか?この記事では、「唐揚げの天才」の急減速の要因を、コロナ禍の影響、仕入れ環境の変化、そしてワタミの戦略転換という視点から多角的に分析します。

テイクアウト需要の波に乗り損ねた「唐揚げの天才」

「唐揚げの天才」は、秘伝のタレに漬け込んだ鶏もも肉を二度揚げしたこだわりの唐揚げと、テリー伊藤氏の実家の味を再現した玉子焼きを看板メニューとして、2018年に誕生しました。コロナ禍初期のテイクアウト需要の高まりを受け、破竹の勢いで店舗を拡大。2021年には、わずか2年7ヶ月で100店舗を達成するという快挙を成し遂げました。

alt="唐揚げの天才の看板"alt="唐揚げの天才の看板"

しかし、その勢いは長くは続きませんでした。コロナ禍が落ち着き、テイクアウト需要が減少に転じると、「唐揚げの天才」は急激な減速に見舞われます。現在では、最盛期の10分の1にまで店舗数が縮小していると言われています。

鳥インフルエンザとウクライナ侵攻…仕入れコストの高騰が追い打ち

「唐揚げの天才」の苦境に追い打ちをかけたのが、原材料価格の高騰です。世界的な鳥インフルエンザの流行により、鶏肉の供給量が減少。さらに、ウクライナ侵攻の影響で穀物価格が上昇し、飼料価格も高騰しました。

国内鶏肉価格は5年間で約2割、唐揚げの調理に欠かせないキャノーラ油に至っては5年間で約7割も値上がりしています。これらの仕入れコストの高騰は、低価格を武器にしていた「唐揚げの天才」にとって大きな痛手となりました。

ワタミの戦略転換:居酒屋業態への回帰

「唐揚げの天才」の運営会社であるワタミは、居酒屋「和民」などを展開する外食大手です。「唐揚げの天才」は、コロナ禍で打撃を受けた居酒屋業態の代替として期待されていましたが、その戦略は成功しませんでした。

食の安全コンサルタントの山田一郎氏(仮名)は、「唐揚げの天才は、コンビニやスーパーの惣菜唐揚げとの価格競争に巻き込まれ、利益を確保するのが難しかったのではないか」と指摘します。

ワタミは現在、居酒屋業態への回帰を図っており、「唐揚げの天才」の出店は縮小傾向にあります。今後は、既存店舗の収益改善や新たな業態開発に注力していくものと思われます。

低価格競争の限界?唐揚げ専門店業界の未来

「唐揚げの天才」の事例は、低価格競争の限界を示唆しているのかもしれません。唐揚げ専門店業界は、コンビニやスーパーの惣菜、冷凍食品メーカーなど、様々な業態との競争にさらされています。

生き残るためには、価格だけでなく、品質、サービス、ブランド力など、多角的な価値を提供していく必要があるでしょう。今後の唐揚げ専門店業界の動向に注目が集まります。