尋常でない中国軍部…血なまぐさい習近平の軍粛清の嵐(2)


結局昨年6月に李尚福が党籍から除名され、7月には魏鳳和の党籍もやはり剥奪された。1年余りにわたる大々的な軍粛清作業で20人ほどの将軍が失脚した。これは何を意味するのか。習近平に続き現在の中国軍ナンバー2と評価される張又侠中央軍事委員会副主席の位置付けが脅かされることになったという話だ。張又侠が装備発展部部長だった時にその下の副部長が失脚した李尚福で、刃先が結局は張又侠に向かわないだろうかという観測からだ。

◇「彭麗媛夫人の支持」董軍、第3の勢力に浮上

中国軍の最高指導部は党中央軍事委員会で、全部で6人だ。主席は習近平、副主席は張又侠と何衛東、委員は劉振立連合参謀部参謀長、苗華政治工作部主任、張升民中央規律委部書記らだ。習近平の次に軍に力を持っている張又侠と何衛東の2人は中国軍内でそれぞれ異なる派閥を代表する。張又侠と劉振立はベトナム戦争への参戦経験があり、越戦幇といわれる。

これに対し何衛東と苗華は台湾包囲軍事訓練を主導する東部戦区で勤め台海幇と呼ばれる。2つの勢力が習近平への忠誠競争を行う中で1年余りにわたり進められた粛清を通じ張又侠派閥が大きな打撃を受けただろうという分析が支配的だった。ところが驚くべきことに張又侠は昨年夏以降に活発な活動で軍内部での位置付けがさらに高まったという話を生んだ。

張又侠は昨年8月に訪中したサリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)と会い、10月には代表団を率いてベトナムを訪問しベトナム総書記と国家主席の両方に会う破格な待遇を受けた。そしてついに昨年11月末には何衛東勢力に青天の霹靂のような知らせが舞い込んだ。軍事委政治工作部主任として事実上1年余り粛清作業を主導してきた苗華が停職処分を受けたと中国国防部が明らかにしたのだ。

苗華の容疑は深刻な規律違反とだけ知らされている。張又侠は父親の張宗遜が習近平の父親の習仲勲の戦友として知られているが、苗華もまた習近平が福建省勤務時代から関係を結んだ核心側近だ。軍序列5位である苗華の落馬が何衛東軍事委副主席をはじめとした台海幇に果たしてどのような衝撃として受け止められるか関心だ。こうした中、先月9日に中国軍の集団指導体制を強調する文が解放軍報に発表されて驚きを呼んだ。

中国軍はこれまで習近平1人体制を意味する「軍事委主席責任制」を強調してきた。これは軍統帥権者である習近平が全権を行使できるようにしようという論理だ。ところが突然に解放軍報が「集団指導を率先して堅持しなさい」という文を載せ、「われわれの党は重大な問題を個人ではなく党集団が決める伝統がある」とし、「指導者分担責任制」を擁護する声を出したのだ。

これに対し中華圏ウォッチャーは習近平の軍内での権力が弱まったのではないかとの観測を出す。張又侠が実際の中国軍の実力者ではないかという話もする。しかしそうだろうか。それよりは何衛東勢力を利用して1年間張又侠を支える軍内派閥を打撃した習近平がいまは反対に張又侠の力を借りて何衛東の側近に一撃を加える高度な統治術を展開するとみられる。

中国軍の派閥を地形から見る場合、張又侠は陝西幇を代表し、何衛東は福建省一帯の閩江幇のトップだ。最近中国ではこれに対抗する第3の軍勢力として山東幇が浮上しているという話もある。董軍国防相がそうした人物で、同郷出身で習近平の妻である彭麗媛の支持を受けているという話がある。軍を握るのは権力掌握と直結する問題で、中国軍の勢力変化はいつも焦眉の関心事に違いない。

ユ・サンチョル/中国研究所長



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