紅白歌合戦、国民的番組として長年親しまれてきましたが、近年は視聴率低迷が続いています。第75回を迎えた今年の紅白も、その課題を浮き彫りにする結果となりました。多様な世代に向けた演出を試みる一方で、番組の軸が揺らいでいるという指摘も。本記事では、紅白歌合戦の現状と今後の展望について考察します。
多様なアーティスト、世代を超えた「あなたへの歌」
今年の紅白のテーマは「あなたへの歌」。K-POP勢から演歌、懐かしの名曲まで、まさに多種多様なアーティストが出演しました。TWICE、LE SSERAFIMといった人気K-POPグループに加え、初出場のME:I、Number_i、ベテラン勢のイルカ、南こうせつ、復活組のTHE ALFEEなど、幅広い世代を意識したラインナップでした。サプライズ出演を果たしたB’zの「LOVE PHANTOM」「ultra soul」は、会場を大いに沸かせました。
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70代の大御所や、74歳のイルカのミニスカート姿など、ベテラン勢の活躍も光りました。一方、前半は若い世代向けのグループが多く、歌合戦というよりダンス合戦の様相を呈していたという声も。TVコラムニストの桧山珠美氏は、「昨年に比べたら楽しめたが、前半は若い人向けの“団体さん”ばかりだった」と指摘しています。
番組の軸は?多様性と焦点のぼやけ
多様なジャンルの音楽が楽しめる一方で、番組全体としての焦点がぼやけているという指摘も少なくありません。メディア文化評論家の碓井広義氏は、「多様性はあるものの、番組を成立させることに縛られすぎて、対症療法的な印象が強い」と述べています。あれもこれもと詰め込みすぎている結果、番組の思想や哲学が揺らいでいるというのです。
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審査基準の不明確さ、演出への疑問
紅白の勝敗を決める審査基準にも、疑問の声が上がっています。B’z、氷川きよし、玉置浩二など、盛り上がりを見せたアーティストが「特別枠」として扱われていた点も、勝敗に影響を与えた可能性があります。桧山氏は、「特別枠の扱いや、ドミノ、けん玉などの演出、一部歌手の特別扱いなど、疑問点が多い」と指摘。碓井氏も、「歌い手へのリスペクトが低く、生演奏も少なかった」と苦言を呈しています。
紅白歌合戦の未来、100年への展望
今回の紅白は、まさに「首の皮一枚」でつながった状態と言えるかもしれません。多様性を追求する一方で、番組の存在意義が問われているのも事実です。碓井氏は、「放送100年という節目を前に、いま一度、根本に立ち返って存在意義を考えるべき」と提言しています。紅白歌合戦が、今後どのように進化していくのか、注目が集まります。