年収2000万円の所得税はいくら? 計算方法と税率を解説

高収入の人がどれくらいの税金を支払っているのかは、多くの方が気になるテーマです。日本の所得税は、所得が多いほど税率が高くなる「超過累進課税」を採用しています。そのため、年収2000万円といった高収入の場合、適用される税率は大きく上がります。

本記事では、所得税の仕組みや計算方法、そして年収2000万円の所得税がどの程度になるかのシミュレーションを、税務の専門知識に基づき分かりやすく解説します。これにより、ご自身の収入や知人のケースなど、さまざまな年収に応じた税額の目安を理解するのに役立つでしょう。

年収2000万円の所得税に関するイメージ画像年収2000万円の所得税に関するイメージ画像

所得税の「超過累進課税制度」とは

日本の所得税制度の最大の特徴は「超過累進課税」です。これは、課税される所得金額が多くなるにつれて、段階的に税率が高くなっていく仕組みです。所得が300万円の人と2000万円の人では、同じ100万円の所得増加があったとしても、その100万円にかかる税率が異なります。高所得者ほど、所得全体に対する税負担率が高くなる構造です。

この税率は、以下の図表1のように定められています。

所得税の速算表(税率と控除額)- 図表1所得税の速算表(税率と控除額)- 図表1

図表1は、所得金額に応じて適用される税率と、税額計算時に差し引かれる控除額(速算表の控除額)を示しています。税率は最低の5%から最高の45%まで、7段階に分かれています。

所得税の計算ステップ

給与所得者の場合の所得税額は、以下の3つのステップを経て計算されます。

  1. 給与所得の計算
    まず、年間の給与収入(額面)から「給与所得控除」を差し引いて「給与所得」を算出します。給与所得控除は、給与所得者が仕事をする上で必要経費に代わるものとして認められている控除で、収入金額に応じて定められています。

  2. 課税所得の計算
    次に、上記で算出した給与所得から、各種の「所得控除」を差し引いて「課税所得」を算出します。所得控除には様々な種類があり、納税者の個人的な事情(扶養家族がいる、社会保険料を支払っている、生命保険料を支払っているなど)を考慮して税負担を調整する役割があります。代表的な所得控除には、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除、生命保険料控除、医療費控除、寄付金控除などがあります。
    なお、令和7年度税制改正により、所得税の基礎控除額が見直されました。これは原則として令和7年12月1日施行、令和7年分以後の所得税に適用されます。基礎控除額は図表2のとおりです。合計所得金額が増えるにつれて控除額が減少する仕組みです。

    所得税の基礎控除額(令和7年分以降)- 図表2所得税の基礎控除額(令和7年分以降)- 図表2

  3. 所得税額の計算
    最後に、上記で算出した課税所得金額に、図表1の速算表を用いて税率を乗じ、そこから速算表の控除額を差し引くことで、最終的な所得税額が計算されます。

年収2000万円の場合の所得税シミュレーション

前述の計算ステップに基づき、年収2000万円の会社員(給与所得者)の所得税をシミュレーションしてみましょう。ここでは、計算を簡略化するため、以下の前提条件を設定します。

  • 年収(給与収入): 2000万円
  • 給与所得控除以外の所得控除: 社会保険料控除(概算)、基礎控除のみを考慮。その他の控除(扶養、生命保険料など)はないものと仮定します。
  • 社会保険料控除: 年収の約15%として概算(300万円と仮定)。実際は年齢や加入している健康保険・厚生年金によって異なります。
  • 基礎控除: 48万円(合計所得金額2400万円以下の場合の令和7年分以降の金額)

計算過程:

  1. 給与所得の計算:

    • 給与収入: 2000万円
    • 給与所得控除額: 収入2000万円の場合、給与所得控除額は195万円(年収850万円超の場合一律)
    • 給与所得 = 2000万円 – 195万円 = 1805万円
  2. 課税所得の計算:

    • 給与所得: 1805万円
    • 所得控除合計: 社会保険料控除(300万円) + 基礎控除(48万円) = 348万円
    • 課税所得 = 1805万円 – 348万円 = 1457万円
  3. 所得税額の計算:

    • 課税所得: 1457万円
    • 図表1に基づき、課税所得1457万円は「900万円超 1800万円以下」の区分に該当します。
    • 適用税率: 33%
    • 速算表の控除額: 153万6千円
    • 所得税額 = 1457万円 × 33% – 153万6千円
    • 所得税額 = 480万8100円 – 153万6000円 = 327万2100円

このシミュレーションに基づけば、年収2000万円の会社員で、所得控除が社会保険料と基礎控除のみの場合、所得税額は約327万円となります。これはあくまで概算であり、実際には扶養家族の有無、医療費控除や寄付金控除の適用など、個別の状況によって税額は変動します。しかし、所得税だけで年間300万円を超える金額になることが分かります。

まとめ

日本の所得税は超過累進課税制度により、所得が高いほど税率も高くなります。年収2000万円の場合、所得税の税率は最大で33%(課税所得ベース)が適用され、シミュレーションでは所得税のみで年間約327万円となることが示されました。

これはあくまで所得税のみの金額であり、実際には住民税や社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料など)も給与から差し引かれます。これらの合計額を考慮すると、年収2000万円の手取り額は、額面の半分程度になることも珍しくありません。

高所得者に対する税負担が大きい日本の税制を理解することは、個人の家計管理やライフプランニングにおいて非常に重要です。

参照