日本と台湾に対する中国の静かな侵略が深刻化しています。サイバー攻撃や工作活動など、多方面にわたる脅威の実態が明らかになりつつあります。本稿では、中国の戦略とその影響、そして日本が直面する安全保障上の課題について掘り下げていきます。
中国発サイバー攻撃の実態:標的は日本の機密情報
警察庁の発表によると、2019年から2024年にかけて、中国のハッカー集団「ミラーフェース」によるサイバー攻撃が210件確認されました。防衛省、外務省などの政府機関、シンクタンク、先端技術企業、さらにはJAXAも標的となり、日本の安全保障や先端技術を狙った組織的な攻撃であることが示唆されています。
日本の防衛省庁舎
ミラーフェースが使用するマルウェアは、中国国家安全省と繋がりのあるハッカー集団「APT10」のものと類似しており、国家関与の疑いが濃厚です。日本カウンターインテリジェンス協会の稲村悠代表理事は、権威主義国家である中国は諜報活動においてアグレッシブであり、その能力を着実に高めていると指摘しています。 グアムの米軍基地におけるインフラへのマルウェア侵入事例を挙げ、日本も同様のリスクに直面していると警鐘を鳴らしています。基幹インフラへの侵入は、最悪の場合、機能停止や復旧不可能な事態を招きかねず、経済安全保障推進法に基づく対策強化が急務となっています。
台湾工作の発覚:武装蜂起計画と中国軍介入の陰謀
台湾では、中国と通じた退役軍人による武装蜂起計画が発覚しました。2022年8月、台湾検察当局は、中国の台湾侵攻に呼応した武装蜂起を企てたとして、退役軍人7人を起訴しました。主犯格の屈宏義被告は、中国人民解放軍関係者から資金提供を受け、武装勢力の育成を図っていたとされています。
軍事施設やAIT台北事務所の情報収集、さらには中国軍10万人の台湾への引き入れ計画など、その工作活動の規模と深刻度は計り知れません。
中国の長期戦略:2049年への布石
元陸上自衛隊中部方面総監の山下裕貴氏は、中国が建国100周年を迎える2049年を目標に、着々と準備を進めていると分析しています。日本へのサイバー攻撃も、有事における日本の対応を探る情報収集活動の一環である可能性が高いと指摘しています。
中国の習近平国家主席
今回明らかになった中国の活動は氷山の一角に過ぎない可能性があり、日本はさらなる警戒と対策強化が求められています。
日本の安全保障の課題:静かな侵略への対応
中国の静かな侵略は、日本の安全保障にとって重大な脅威です。サイバー攻撃への対策強化だけでなく、情報収集・分析能力の向上、国際連携の強化など、多角的なアプローチが不可欠です。 民主主義国家の価値観を守るためにも、中国の動向を注視し、戦略的な対応を構築していく必要があります。
この深刻な状況を理解し、国民一人ひとりが安全保障意識を高めることが、日本の未来を守る上で重要です。