日本の会社員はなぜ管理職になりたくないのか? 時代の変化と重圧

現代社会において、かつて憧れの的であった管理職の地位が、その輝きを失いつつあります。責任の重圧、長時間労働、そして変わりゆく価値観の中で、管理職を敬遠する若手社員が増えているのです。一体何が、彼らを「なりたくない」という気持ちにさせているのでしょうか?

管理職の役割:古代から現代まで

管理職の歴史は古く、古代エジプトのピラミッド建設現場にも労働者を指揮する役割が存在していました。現代の企業では、部長や課長といった役職が管理職に該当します。彼らは部署の責任者として、部下を指導し、目標達成に向けてチームを率いる重要な役割を担っています。

昭和時代の管理職像:「出世のためなら苦労も我慢」

高度経済成長期やバブル景気時代の日本では、「出世のためなら苦労も我慢」という風潮が強く、管理職は出世の象徴として多くのサラリーマンが目指す存在でした。1983年から連載が始まった漫画「課長島耕作」も、当時の企業社会における管理職の地位を反映しています。

現代社会における管理職の苦悩:長時間労働と重圧

しかし、近年の価値観の変化とともに、管理職を取り巻く環境は大きく変化しています。パーソル総合研究所の調査によると、管理職を希望する日本の会社員の割合は、世界平均を大きく下回り最下位という結果が出ています。

人手不足と長時間労働

少子高齢化による人手不足の深刻化は、管理職の負担を増大させています。「働き方改革」の推進により部下の労働時間は削減される一方で、管理職自身は長時間労働を強いられるケースも少なくありません。産業能率大学の調査では、管理職の約95%がプレイングマネージャーとして業務を兼任しているという結果が出ています。

プレイングマネージャーの多忙さをイメージしたビジネスマンのイラストプレイングマネージャーの多忙さをイメージしたビジネスマンのイラスト

部下の多様化とハラスメントリスク

共働き世帯の増加に伴い、育児や介護を抱える部下も増え、管理職にはきめ細やかな配慮と柔軟な対応が求められます。部下の指導や育成とハラスメントの境界線は曖昧になり、管理職は常にハラスメントリスクと隣り合わせの状況で業務を行っています。

管理職の未来:新しいリーダーシップの模索

管理職の未来を象徴する、未来都市のイラスト管理職の未来を象徴する、未来都市のイラスト

現代社会の複雑化するニーズに対応するためには、従来の管理職像からの脱却が必要不可欠です。部下を管理するのではなく、個々の能力を最大限に引き出し、チーム全体のパフォーマンスを向上させるための、新しいリーダーシップが求められています。企業は、管理職の負担軽減やスキルアップのための研修制度を充実させるなど、より働きやすい環境づくりに取り組む必要があります。

管理職のあり方を見つめ直す時代

長時間労働や重圧といったネガティブなイメージが先行する管理職ですが、組織をまとめ、目標達成に向けてチームを導く重要な役割を担っていることは間違いありません。これからの時代は、管理職の役割と責任、そしてその魅力を再定義し、より多くの優秀な人材が管理職を目指せるような社会を目指していく必要があるでしょう。