日航機墜落事故40年を前に、御巣鷹の尾根麓で鎮魂の灯籠流し

1985年8月に乗員乗客520人が犠牲となった日本航空ジャンボ機墜落事故から12日で40年を迎えるのを前に、事故現場「御巣鷹の尾根」(群馬県上野村)の麓を流れる神流川で11日、犠牲者を悼む鎮魂の灯籠流しが執り行われた。この日、多くの遺族や関係者が集い、故人への変わらぬ思いを水面に託した。

鎮魂の灯籠流し、遺族の変わらぬ思い

遺族らは事故発生時刻の午後6時56分に合わせ、「見守っていて下さい」「みんな元気にしています」など、亡き人へのメッセージを記した約200個の灯籠を水面に浮かべた。河原には明かりが並べられ、「8・12」の文字が形作られ、厳かな雰囲気に包まれた。

宝塚歌劇団で活躍し、この事故で命を落とした吉田由美子さん(当時24歳)と同期だった俳優の黒木瞳さんは、今回初めて灯籠流しに参加した。吉田さんの死を認めたくなくて、これまで現場を訪れることができなかったという黒木さんだが、40年という節目の年に決意を固めた。「やっと来られた。遅くなってごめんね。でも、来る勇気がなかった」と涙を拭いながら、静かに灯籠を川に流した。

黒木瞳さんが日本航空墜落事故の犠牲者を追悼し灯籠を流す様子。40年目の節目に御巣鷹の尾根麓、神流川で行われた鎮魂の灯籠流し。黒木瞳さんが日本航空墜落事故の犠牲者を追悼し灯籠を流す様子。40年目の節目に御巣鷹の尾根麓、神流川で行われた鎮魂の灯籠流し。

父・昭司さん(当時50歳)を亡くした神奈川県大和市の司書、若本千穂さん(60)も2年ぶりに参加。「家族みんなで頑張って生きているよ」。空から見守る父を思いながら、灯籠を流した。昭司さんは仕事で家を空けることが多かったが、家族の会話を笑顔で見守る優しい人だったという。若本さんは12日に御巣鷹の尾根へ登る予定で、「ここが父の居る場所。ここに来ることに意味がある」と静かに語った。

世代を超えて受け継がれる「使命」と安全への願い

父・孝之さん(当時29歳)を亡くした兵庫県芦屋市の会社員、小沢秀明さん(39)は、事故の約半年後に生まれた。灯籠には「もうすぐ40歳です」「見守っていてください」と記した。3年前に長女が生まれ、自身も父親になったことで心境の変化があったという。「生きていたらタバコはもうやめたかな、ビールはノンアルコールにしたかなと、(以前より)楽しい気持ちで父に思いをはせることが増えた」と語る。

小沢さんは、遺族の高齢化が進む中で「事故を知らない世代に伝えていくのが自分たちの使命」と強く語った。また、日本航空に対し、「40年で改めて気を引き締めて、もう事故が起こらないようにしてほしい」と、安全への揺るぎない願いを伝えた。この灯籠流しは、事故の記憶を風化させず、安全への教訓を未来に繋ぐための大切な場となっている。

犠牲者への追悼とともに、遺族たちが紡ぐ言葉は、改めて命の尊さと安全への誓いを社会に問いかける。


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