地球温暖化の影響で縮小する北極海の海氷。その異変が世界各地で異常気象を引き起こし、私たちの生活に大きな影を落としています。台湾では記録的な寒波で多数の死者が出ているほか、アメリカでも異常な寒波と高温現象が同時に発生しています。一体何が起きているのでしょうか?この記事では、北極海の海氷縮小と世界的な異常気象の関連性について詳しく解説します。
台湾を襲った記録的寒波、死者500人近くに
台湾では2024年1月、二つの大陸性寒冷気団の影響で気温が急激に低下し、多くの地域で10度を下回る記録的な寒波に見舞われました。この寒波により、11日までに492人が低体温症などで亡くなったと報告されています。亜熱帯気候の台湾では暖房設備が整っていない住宅が多く、寒さへの備えが不十分だったことが被害を拡大させた一因と考えられます。
台湾の玉山で雪が降る様子
台湾中央気象庁(CWA)は寒波特報を発令し、国民に注意を呼びかけました。国立台湾大学病院救急医学部の張維典代理主任は、「急激な気温変化は心血管疾患のリスクを高めるため、高齢者だけでなく40~50代も注意が必要だ」と警鐘を鳴らしています。
アメリカでは寒波と高温現象が同時に発生
アメリカでは地域によって極端な寒波と異常高温現象が同時に発生しています。中西部と東部では北極からの寒波が南部まで到達し、被害が拡大。温暖な気候で知られるテキサス州でも気温が氷点下まで下がり、一部地域では記録的な大雪が観測されました。
一方で、アラスカ州では異常な高温現象が続いています。南部のアンカレッジでは1月12日に最低気温が2.2度を下回らず、1月としては観測史上最高を記録しました。
北極海氷の縮小が異常気象の要因か?
気象学者は、北極海の海氷の縮小が冬季の異常気象の一因であると指摘しています。海氷面積は北半球の気象に大きな影響を与えますが、2024年冬は観測史上最小レベルまで縮小しており、その影響が世界各地で顕著に現れています。
米国立雪氷データセンター(NSIDC)によると、2023年12月の平均海氷面積は1979年の観測開始以来最小を記録。1月に入っても最小レベルが続いています。NSIDCは「1979年以降、韓国の国土面積の約20倍に相当する海氷が消失した」と発表し、北極温暖化の深刻さを改めて示しました。
海氷面積の縮小は、北極上空の極渦を弱体化させ、ジェット気流を蛇行させる原因となります。これにより、北極の寒気が中緯度地域まで南下しやすくなり、寒波の発生や異常高温現象につながると考えられています。
専門家の見解と今後の展望
釜山経済大学環境大気科学科のキム・ベクミン教授は、「海氷面積の縮小はブロッキング現象(気圧停滞)を引き起こし、北極の寒気を中緯度地域に送り込む可能性を高める」と説明。さらに、「海氷の縮小と相まって、北極の冷気がより強く南下する傾向にある」と指摘しています。
北極発の寒波は1月末まで北半球各地に影響を及ぼすと予想されています。キム教授は「2月は北極寒波の影響が弱まる時期であり、温暖化の影響で冬季の気温は上昇傾向にある」としながらも、「12~1月は北極寒波による気温変動が大きい可能性があるため、注意が必要だ」と警鐘を鳴らしています。
今後の気象変動に備えるために
北極海の海氷縮小と異常気象の関連性が明らかになるにつれ、地球温暖化対策の重要性が改めて認識されています。私たちは、気候変動の現状を理解し、持続可能な社会の実現に向けて一人ひとりができることから取り組んでいく必要があります。