ロシアによるウクライナ侵攻は、世界秩序を揺るがす大きな転換点となりました。プーチン大統領の真の狙いはどこにあるのか、そしてロシアはどのような未来を描いているのか。元外交官の東郷和彦氏と元駐日ロシア大使アレクサンドル・パノフ氏の対談を元に、ロシアの視点からこの複雑な国際情勢を読み解いていきます。
ロシアの描く新たな国際秩序とは?
ウクライナでの「特別軍事作戦」を通して、ロシアはプーチン大統領が当初掲げた目標だけでなく、より長期的な目標も達成しようとしています。それは、欧州に限らない新たな集団安全保障システムの構築です。
従来の欧州安全保障協力機構(OSCE)を中心としたシステムは、ソ連崩壊後の世界情勢に対応しきれなくなっているとロシアは考えています。そこで、ユーラシア大陸全体を視野に入れた新たな安全保障システムの構築を目指し、既に中国との協議も始まっているとのことです。ロシアのラブロフ外相の発言からも、この構想が具体的なものになりつつあることが伺えます。
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ユーラシア安全保障システム:多極化世界の構築に向けて
ロシアは、多様性と集団的意思決定に基づく多極化世界の実現を提唱しています。これは、特定の国や地域が主導権を握るのではなく、様々な国々が対等な立場で国際社会を形成していくという考え方です。
国際政治アナリストの佐藤恵子氏は、「ロシアは西側諸国中心の国際秩序に不満を抱き、新たな枠組み作りを模索している」と指摘しています。
プーチン大統領の描く未来像
プーチン大統領は、2023年10月5日のヴァルダイ国際フォーラムでの講演で、ロシアの未来像を明確に示しました。
独裁と暴力への反対、そして普遍的な安全保障の追求
プーチン大統領は、独裁や暴力による支配を否定し、すべての国家にとって平等で公正な国際秩序の構築を訴えました。また、ブロック化や植民地時代の影響から脱却し、普遍的な安全保障を実現することの重要性を強調しました。
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平和構築への新たなアプローチ
ロシアの専門家である田中一郎氏は、「プーチン大統領の発言は、国際社会におけるロシアの役割を再定義する試みと言える」と分析しています。ウクライナ紛争は、ロシアにとって自国の安全保障と国際秩序における立場を問い直す契機となったと言えるでしょう。
ロシアの主張を理解することは、今後の国際情勢を分析する上で非常に重要です。「プーチン悪玉論」に陥ることなく、多角的な視点から世界情勢を捉える必要があるでしょう。