ハラル給食:保育園・学校で広がる多文化共生への取り組み

イスラム教徒(ムスリム)人口の増加に伴い、日本の保育園や学校では、宗教的戒律に配慮した「ハラル食」の提供が広がりを見せています。ハラル食とは一体どのようなものなのか、提供する上での課題やメリット、そして日本の食文化との融合について、詳しく見ていきましょう。

ハラル食とは?ムスリム家庭の安心を支える食卓

ハラルとは、アラビア語で「許された」という意味で、イスラム教の教えに基づいて食べることが許されている食材や調理法を指します。豚肉やアルコールはもちろん、屠殺方法にも厳格な規定があり、これらを遵守した食事がハラル食となります。都内在住のバングラデシュ出身のジャマン・MD・シャハダットさん(40)は、5年前、近所の保育園でハラル給食が提供されていることを知り、大変安堵したといいます。「ハラル食のおかげで、子どもたちを安心して預けることができますし、お弁当作りからも解放されて本当に助かっています」と、笑顔で語ってくれました。

alt ハラル対応のチキンみそカツを美味しそうに食べる園児たちalt ハラル対応のチキンみそカツを美味しそうに食べる園児たち

ハラル給食の実際:アレルギー対応との共通点

ハラル食を提供するとなると、手間やコストがかかるのでは?という疑問も浮かびますが、東京都北区の「LIFE SCHOOL桐ケ丘こどものもり」保育園の調理師は、「食物アレルギー対応と同様に考えているので、特に大変だとは感じていません」と話します。同園では園児86人のうち18人がムスリム(2024年12月16日時点)で、アレルギー対応と同様に、食材の代替や調理方法の工夫によってハラル食を提供しています。

日本食との融合:名古屋名物「みそカツ」もハラルに

ハラル食というと、イスラム諸国の料理を想像しがちですが、同園では日本の食文化をベースにしたハラル食を提供しています。取材当日のメニューは名古屋名物「みそカツ」。ムスリムの園児には、豚肉を鶏肉に代えた「チキンみそカツ」が提供されました。鶏肉は豚肉とは別の鍋と油で揚げる必要がありますが、みそだれや付け合わせのサラダは共通で提供できます。実際にチキンみそカツを試食してみると、鶏肉のジューシーさとみその風味が絶妙にマッチした、大変美味しい一品でした。

alt ハラル対応のチキンみそカツの調理風景alt ハラル対応のチキンみそカツの調理風景

ハラル食材のコスト:意外と高くない?

ハラル食材は高価なイメージがありますが、同園では工夫によってコストを抑えています。例えば、しょうゆやみりんはアルコール含有量の少ないものを選定することで、ムスリムの園児も食べられるようにしています。また、鶏肉は豚肉よりも安価な場合もあり、必ずしもコスト高になるとは限らないとのこと。食育の専門家である山田先生(仮名)も、「ハラル食は特別なものではなく、多様な食文化の一つとして捉えることが大切です。工夫次第で、無理なく取り入れることができるでしょう」と述べています。

まとめ:多文化共生社会実現への一歩

ハラル給食の提供は、ムスリム家庭にとって大きな安心材料となるだけでなく、子どもたちにとっては異文化理解を深める貴重な機会となります。今後ますます多様化する社会において、ハラル食への理解と受容は、多文化共生社会実現への重要な一歩となるでしょう。