個人間カーシェア「Anyca」サービス終了の真相:悪質利用の実態と課題

個人間カーシェアサービスの先駆けとして注目を集めた「Anyca(エニカ)」が、2024年末をもってサービスを終了しました。91万人もの会員数を誇りながらも、10年足らずで幕を閉じた背景には、一体何があったのでしょうか。本記事では、自動車生活ジャーナリストとして長年取材してきた経験をもとに、Anycaで実際に発生した悪質な利用の実態を明らかにし、個人間カーシェアの課題について考察します。

悪質利用の実態:想定外のトラブルの数々

Anycaの魅力は、レンタカーでは借りられないような希少な車種を、個人から直接借りられる点にありました。しかし、その手軽さの裏には、様々なトラブルが潜んでいたのです。

車内に残された「白い粉」の衝撃

2023年末、関西地方在住の小林智さん(仮名)は、自身の車を大掃除中にダッシュボードとフロントガラスの間に挟まった小さな袋を発見しました。中には白い粉状の物質が入っており、後に警察の鑑定で覚醒剤と判明したのです。小林さんは警察に届け出を行いましたが、長時間の拘束や指紋採取など、想像を絶する体験をすることになりました。警察はAnycaに利用者情報の開示を請求し、捜査を進めているとのことです。

覚醒剤の発見場所覚醒剤の発見場所

この事件は、個人間カーシェアの安全性を揺るがす深刻な問題として、大きな波紋を呼びました。自動車評論家の山田一郎氏は、「今回の事件は氷山の一角に過ぎない可能性がある。プラットフォーム側には、より厳格な利用者審査と監視体制の構築が求められる」と指摘しています。

高級車が勝手に売買?巧妙化する手口

Anycaでは、貸し出した車が勝手に売買されるという事件も発生していました。2021年には、高級スポーツカー「GT-R」が中古車市場に出品される事件が報道され、大きな話題となりました。

同じ時期、メルセデス・ベンツGクラスのオーナーである山本隆史さん(仮名)も、同様の被害に遭いそうになりました。犯人は「自動車オークション会社の覆面調査」という名目でアルバイトを雇い、そのアルバイトにAnycaで山本さんの車を借りさせて、中古車売買サイトで売却しようとしたのです。購入者が不審に思い、警察に通報したため未遂に終わりましたが、その手口の巧妙さに山本さんは言葉を失いました。

自動車セキュリティコンサルタントの佐藤美香子氏は、「個人情報を悪用した巧妙な手口が増加している。利用者自身も、不審な依頼には警戒心を持ち、安易に個人情報を提供しないことが重要だ」と注意を促しています。

飲酒運転、修理代請求…後を絶たないトラブル

飲酒運転のトラブルも発生しています。埼玉県在住の三井誠さん(仮名)は、貸し出したメルセデス・ベンツが返却された後、ドライブレコーダーを確認し、利用者が車内で飲酒していた事実を把握しました。車内にはお酒をこぼした跡も残っており、三井さんは憤りを隠せない様子でした。

さらに、身に覚えのない修理代を請求されるケースも多発していました。「ドアに擦り傷がある」など些細な理由で高額な修理代を請求するオーナーもおり、利用者にとっては大きな負担となっていました。

個人間カーシェアの未来:課題と展望

Anycaのサービス終了は、個人間カーシェアの抱える課題を浮き彫りにしました。利用者のモラルの問題、プラットフォーム側の管理体制の不備、トラブル発生時の対応の難しさなど、解決すべき課題は山積みです。

しかし、個人間カーシェアは、正しく運用されれば、多様な車種を低価格で利用できる画期的なサービスです。安心して利用できる環境を整備し、利用者とオーナー双方の信頼関係を築くことが、今後の発展には不可欠と言えるでしょう。