韓国政界を揺るがした尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領の戒厳令発令。内乱首謀などの疑いで逮捕された尹氏とその弁護団は、不正選挙疑惑を暴くための「非常戒厳」だったと主張し、波紋を広げている。本稿では、尹氏の主張、中国介入疑惑、そして矛盾する証言など、この事件の真相に迫る。
不正選挙疑惑と中国介入の主張
尹氏側は、中国と北朝鮮による中央選挙管理委員会へのハッキングの試みがあったと主張。不正選挙の背後に中国の影があると訴え、革新系野党が韓国を中朝両国の植民地にしようとしていると批判した。保守層の支持を集める戦略と見られるこの主張は、弾劾審判においても焦点の一つとなっている。
尹氏は、戒厳令によって国会と中央選管に兵力を投入し、不正選挙の証拠を押収しようとしたと説明。選管の研修施設に滞在していた中国人の名簿提出を要請するなど、中国介入疑惑を強調している。
韓国国旗
矛盾する証言とほころびる主張
尹氏の主張とは裏腹に、共犯として逮捕・起訴された軍や警察幹部の証言は、多くの点で食い違っている。例えば、「一切の政治活動を禁じる」とした布告文について、尹氏側は前国防相の誤記だと主張する一方、前国防相は「大統領の検討を経た正当な内容」だと反論している。
国会への兵力投入についても、尹氏側は秩序維持のための最小限の措置であり「平和的戒厳」だったと釈明。しかし、司令官は尹氏から「銃を撃って扉を壊してでも議員を引きずり出せ」との指示を受けたと証言するなど、尹氏の直接指示を示唆する証言が複数出ている。
破壊された裁判所の壁
混迷深まる韓国政局:尹氏の孤立
尹氏の主張は、熱狂的な支持者を持つ一方で、多くの証言との矛盾が目立ち、その孤立を印象づけている。今後の捜査や弾劾審判の行方、そして韓国政局への影響に注目が集まる。