韓国半導体洗浄技術の中国流出未遂事件:検察、デジタル指紋で技術盗用を立証

サムスン電子の子会社が保有する最先端の半導体洗浄技術が、中国企業に流出する寸前で阻止された事件の詳細が明らかになりました。水原地検は19日、産業技術保護法違反などの容疑で、中国系企業A社の運営者ら2名を拘束、その他関係者9名と法人3社を在宅起訴しました。本稿では、事件の背景、検察の捜査、そして今後の展望について詳しく解説します。

国家核心技術、中国へ流出の危機

サムスン電子とその子会社は、30年以上にわたる研究開発の末、半導体製造工程における洗浄技術を確立しました。髪の毛の1万分の1という微細な異物も除去できるこの技術は、半導体歩留まり向上に不可欠な「国家核心技術」に指定されています。今回、この重要な技術が中国企業に流出しようとしていたのです。

サムスン電子と子会社が開発した「国家核心技術」である半導体洗浄装備。サムスン電子と子会社が開発した「国家核心技術」である半導体洗浄装備。

巧妙な手口と検察の執念の捜査

A社の運営者は、サムスン電子の元エンジニア。高額の報酬で韓国の半導体専門家を集め、洗浄装置関連企業を設立しました。そして、中国の大手半導体装置メーカーからの出資を受け、自社の技術と人材をA社に譲渡。その後、韓国企業の技術資料を違法に入手し、中国向け洗浄装置の開発を進めていたことが判明しました。

A社は、技術流出を防ぐため、徹底した隠蔽工作を図っていました。仮名を使用し、看板も掲げずに会社を運営。コピーした資料は削除し、関係者による通報の噂が広まると、携帯電話を一斉に交換するほどの徹底ぶりでした。

デジタル指紋が決め手

A社は、盗用した技術で試作品を製作し、中国へ輸出。さらに量産装備2台の製造にも着手していました。しかし、国家情報院からの情報提供を受けた検察は、独自に開発したデータ解析技術を用いて、A社に残された資料から「デジタル指紋」を発見。これが技術盗用の決定的な証拠となりました。

検察がA社から押収した製作中の洗浄装備。検察がA社から押収した製作中の洗浄装備。

今後の対策と課題

検察は、A社が中国本社から受け取った開発資金約100億ウォンを犯罪収益として差し押さえ、装備開発を中止させました。今回の事件は、国家核心技術の保護における課題を浮き彫りにしました。 今後、より高度なセキュリティ対策と国際協力が不可欠となるでしょう。

半導体産業の未来を守るために

今回の事件は未遂に終わりましたが、国家核心技術の流出は、国の経済安全保障を揺るがす重大な問題です。関係機関の連携強化、技術者への倫理教育、そして国民一人ひとりの意識向上など、多角的な対策が必要です。 日本の半導体産業にとっても、他山の石として、改めてセキュリティ対策を見直す必要があるのではないでしょうか。