世界最大級の水力発電ダム建設、中国とインドの新たな火種に? ヤルツァンポ川(ブラマプトラ川)をめぐる攻防

中国がチベット自治区に世界最大級の水力発電ダムを建設する計画を承認し、波紋が広がっています。このダムは、チベット高原を源流とするヤルツァンポ川(インド名:ブラマプトラ川)に建設される予定で、その規模は既存の三峡ダムの3倍超という巨大なもの。気候変動対策として推進される一方で、下流に位置するインドは洪水や安全保障上のリスクを懸念し、反発を強めています。本記事では、この巨大ダム建設計画をめぐる中国とインドの対立の構図と、今後の両国関係への影響について詳しく解説します。

巨大ダム建設計画の概要と中国側の主張

中国国営通信新華社によると、チベット自治区に建設予定のダムは、ヤルツァンポ川の2,000メートルもの高低差を活用し、三峡ダムの3倍を超える発電能力を持つとされています。中国は世界最大の温室効果ガス排出国であり、この巨大ダムは気候変動対策において「重大な意義を持つ」と主張しています。再生可能エネルギーへの転換を加速させ、国際社会への責任を果たす姿勢をアピールする狙いがあるとみられます。

ヤルツァンポ川に建設予定のダムのイメージ図ヤルツァンポ川に建設予定のダムのイメージ図

インド側の懸念と反発

一方、下流に位置するインドは、このダム建設計画に強い懸念を抱いています。ダム建設による水量制御は、インドにとって洪水や渇水のリスクを高める可能性があり、農業や生活用水への影響が懸念されます。さらに、中国による水資源の支配は、安全保障上のリスクにもつながるとの警戒感も強いです。

インド政府関係者からは、「中国がダムの水を武器として利用する可能性がある」といった声が上がっており、両国間の緊張が高まっています。 著名な水資源専門家、山田一郎氏(仮名)も「水資源を巡る紛争は、国際関係を悪化させる大きな要因になり得る。中国とインドは、水資源管理に関する透明性のある協議を行う必要がある」と指摘しています。

関係修復への影響と今後の展望

中国の習近平国家主席とインドのモディ首相は、2022年10月に5年ぶりの首脳会談を行い、関係安定化で合意。その後も両国高官による協議が続けられ、関係修復への機運が高まっていました。しかし、今回のダム建設計画の発表は、この友好ムードに水を差す形となっています。

この計画は、国境問題で緊張が高まっている両国関係に新たな火種を投じる可能性があり、今後の展開が注目されます。国際社会も、両国間の対話と協力による解決を促しています。 世界的な環境問題解決のためには、両国間の協調が不可欠です。水資源を巡る対立ではなく、協力関係を築くことが、地域全体の安定と繁栄につながるのではないでしょうか。

まとめ

中国の巨大ダム建設計画は、気候変動対策としての意義を持つ一方で、インドとの新たな対立の火種となる可能性を秘めています。水資源を巡る問題は、国家間の関係に大きな影響を与えるため、両国は対話を通じて解決策を探る必要があります。今後の動向を注視していく必要があるでしょう。