◇ALSOK杯第74期王将戦7番勝負 第2局第2日(2025年1月26日 京都府京都市 伏見稲荷大社 )
永瀬拓矢九段(32)は工夫の戦型「横歩取り」を藤井聡太王将(22)にぶつけたが、最後までペースを握ることができず、無念の開幕連敗。京都でのタイトル戦はこれで3連敗、通算でも1勝4敗と、なぜか歯車がかみ合わない。
72手目の考慮中に眼鏡を外した永瀬はレンズを拭き終えて両手を後頭部に組んだ。藤井が離席すると「いやあ…」とかすかにつぶやく。78手目に臨む時間帯では、藤井が着席しているにもかかわらず「いやあ…」。苦しい胸の内を分かりやすく漏らす姿が痛々しい。
2度目の1分将棋に入り、52秒まで読まれてから潔く投了。「形勢は難しい(互角)と思っていたんですけど、直線の攻めでは結構負けの変化が多い。局面が複雑になって、どれが難しいのか判断がつかなかったです」と、消化不良に終わった本譜を回顧した。
戦型の横歩取りは「はい、誘導しました」と認めた。過去26戦の対局を振り返ると、20年9月15日の銀河戦以来。後手の永瀬は敗れたものの、同棋戦は早指し戦。持ち時間の長い対局では初めてぶつけた策だった。
指し掛け直前の42手目△1四歩は相手の予想範囲になく「(藤井が)困っているところがあった」と、ある程度の手応えをつかんでいた。だが一夜明けての封じ手▲5六角への対応にやや誤算があったのか。終盤に入って2筋への防波堤として58手目に打った△2二歩(第2図)。自王の脱出ルートを封鎖してしまうデメリットに対し、徹底抗戦を明示する待ち受けの歩だ。忍従の一方で攻め合いも模索したが、あっさりはね返され、結局は差が広がる一方だった。
京都とは相性が良くない。一昨年、昨年は王座戦で藤井相手に心が折れるような逆転負けを喫した。「なぜそんなことがあったのかは自分なりに結論が出ています」と、後遺症的な感覚は否定しているものの、この日の内容はリードを奪う局面がほとんどない力負け。「スコアは厳しくなってしまったが(次局も)精いっぱい頑張りたい」と前を向く永瀬にとって、藤井相手にさらなる分析が必要かもしれない。(我満 晴朗)