2024年12月28日付のフィナンシャル・タイムズ紙で、同紙のギデオン・ラックマンは、米露中は夫々世界秩序に変革を求める修正主義国家となった、今後の新しい世界秩序は確言できないと、5つのシナリオを示している。
今や、米中露三国が夫々異なる形で現行世界秩序に変革を求める修正主義国家となった。中露は、驚くべきことではないが、不可解で深刻な影響を及ぼすのは、米国の修正主義だ。
米国が本気で国際的なコミットメントを見直すのであれば、世界は適応する他ない。これに最も脅威を感じている国々は、米国の伝統的同盟国(英国、日本、カナダ、韓国、ドイツ、欧州連合〈EU〉諸国等)である。
英国(対米赤字)は、関税からの免除を期待する。日本は、トランプ関税の標的になるだろうが、対米報復はしないだろうし、安全保障が交渉の駒になることは避けるだろう。
安全保障では、ロシアと中国が最も危険な修正主義者だ。彼らは、新しい世界秩序の中心は西側の力の衰退だとする。
プーチンと習近平には具体的な領土要求がある。ロシアはウクライナの独立を事実上終わらせ、親露的な政府をウクライナに樹立しようとしている。ウクライナでロシアが勝利すれば、世界、特に中国のアジアでの修正主義的な野心追求に勇気を与える。習近平は軍に2027年までに台湾征服の準備を整えるよう指示したという。
これらのことを考えると、今後の世界秩序について確言は出来ない。出来るのはシナリオだけだ。以下5つの可能性がある。
第一は、新たな大国間の取引である。米露中が夫々の地域での勢力圏を事実上認める。米国は、自国の地域での支配を主張し、メキシコやカナダに圧力をかけ、パナマ運河の奪還やグリーンランドの支配を目指す。
トランプは、ウクライナに和平合意を強制するが、安全保障は保証しない。対ロシア制裁は緩和される。米国は中国への技術制限や関税を緩和し、中国は米国製品を購入し、テスラ等米国企業に特別待遇を与える。
第二のシナリオは、偶発戦争である。ウクライナ停戦は合意されるが、ロシアの戦闘再開の恐怖が欧州全体に広がる。トランプは同盟国防衛への疑念を拡散する。
西側の混乱を利用して、中国、ロシア、北朝鮮が単独又は共同で、アジアや欧州で軍事行動を始める。彼らは誤算し、アジアや欧州の民主主義国が反撃し、米国は二度の世界大戦のように紛争に巻き込まれる。