米中関係の緊張が続く中、中国の王毅政治局委員兼外相がマルコ・ルビオ米国務長官との電話会談で発した四字熟語「好自為之(自ら正しく行動するべき)」が波紋を広げています。本記事では、この一言に込められた中国の意図、そして今後の米中関係への影響について深く掘り下げていきます。
「好自為之」の重み:警告か、それとも交渉の布石か?
王毅外相はルビオ長官に対し、「大国が大国の姿を備えるには国際的な責任を果たさなければいけない」と述べ、続けて「好自為之」と釘を刺しました。この言葉は、一見シンプルな警告のようにも聞こえますが、その背後には複雑な思惑が隠されているようです。
人民大国際関係学院の王義桅教授は、ルビオ長官の過去の対中発言を指摘し、「好自為之」は米国が中国との交渉を求めるならば、まずは「間違った立場を正すべき」というメッセージだと解釈しています。つまり、中国は米国との対話を完全に拒否しているわけではなく、一定の条件を提示することで主導権を握ろうとしている可能性があります。
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西側メディアと中国メディアの温度差
興味深いのは、この「好自為之」に対する西側メディアと中国メディアの反応の違いです。AP通信やロイター通信は「うまく振る舞うべき」といった直訳的な表現を用いて、王毅外相の強い姿勢を強調しました。一方、中国外務省は「相応の行動をすべき」とやや婉曲的な表現を用い、国営英字紙チャイナデイリーは「正しく決定するべき」とさらに穏やかな表現で伝えています。
この違いは、中国が国内向けと国外向けで異なるメッセージを発信していることを示唆しています。国内では強硬な姿勢を示すことで国民の支持を集め、国外では過度な刺激を避けることで国際社会からの反発を抑えようとしているのかもしれません。
中国ネットユーザーの反応と国営メディアの援護射撃
中国のネットユーザーの間では、王毅外相の「好自為之」発言は概ね好意的に受け止められています。「覇気がある」「大人の警告だ」といったコメントが多数寄せられ、中国の外交姿勢を支持する声が目立ちます。
さらに、国営メディアも王毅外相を後押しするように、「反中の立場に固執すれば、いかなる結果があるかをよく判断するべき」といった警告を発しています。こうした国営メディアとネットユーザーの連携は、中国政府の意図を反映していると考えられます。
過去の「好自為之」:韓国への警告
実は、中国が「好自為之」という言葉で他国に警告を発したのは今回が初めてではありません。過去には、韓国の尹錫悦大統領が英国で締結した「ダウニング街合意」や、南シナ海における中国海警船の行動に対する韓国外交部の懸念表明に対して、中国は「好自為之」という言葉を用いて韓国を牽制しています。
これらの事例からもわかるように、「好自為之」は中国が他国に対して不快感を示す際に用いる常套句となっているようです。
米中首脳会談早期実現の可能性は?
今回の米中外相間の電話会談は、バイデン政権発足からわずか5日目に行われました。これは、トランプ政権発足時や前回のバイデン政権発足時と比較しても非常に早いタイミングです。
このことから、米中首脳会談の早期実現に向けた動きが始まっているという見方も出ています。トランプ大統領は就任100日以内に中国を訪問する意向を示していましたが、今回の外相会談では首脳会談に向けた具体的な協議が行われた可能性があります.
今後の米中関係は予断を許さない状況ですが、今回の「好自為之」発言は、中国の姿勢を理解する上で重要な手がかりとなるでしょう。