大久野島、別名「うさぎの島」。多くの観光客が可愛いウサギたちとの触れ合いを求めて訪れるこの島で、昨年末から今年にかけて、うさぎが不審死を遂げる痛ましい事件が発生しました。犯人は逮捕されましたが、その裏には、島を愛する写真家夫婦の献身的な努力と勇気ある行動があったのです。今回は、この事件の真相と、うさぎを守るために行動を起こした夫婦の物語に迫ります。
ウサギ専門写真家、異変に気づく
大久野島のウサギたち
熊本県在住の中村隆之さん(49)と妻の麿矢さん(46)は、ウサギ専門の写真家として活動しています。2000年に初めて大久野島を訪れて以来、その魅力にとりつかれ、月に一度は撮影のために島を訪れるほど。しかし、昨年12月の訪問で、彼らは異変に気づきました。両脚が折れたり、鼻から血を流したりしたウサギの死骸が、岩陰など人目に付きにくい場所に複数発見されたのです。
人為的な虐待を疑い、警戒を強める
大久野島で発見されたウサギの死骸
「これは自然死ではない、人の仕業ではないか…」。そう直感した中村さん夫婦は、翌1月から島に宿泊し、警戒を強めました。そして、予感は的中します。1月21日午後、朝撮影したばかりのウサギが、巣穴から頭を出した状態で死んでいるのを発見したのです。「犯人はまだ島にいる」。そう確信した二人は、知人からの情報提供を受け、怪しい男を特定。傷んだニンジンでウサギをおびき寄せ、蹴り上げる現場を目撃し、すぐさま男を取り押さえ、警察に通報しました。
犯人逮捕、そして感謝状
環境省中国四国地方環境事務所によると、島内では昨年11月以降、不審なウサギの死骸が合計99匹も発見されていました。竹原警察署は、逮捕された男とこれらの事件との関連性を捜査しています。男の逮捕後、被害は収まっているとのこと。同事務所の岡部佳容課長補佐は安堵の表情を浮かべ、「中村さん夫婦には、今後も島を見守ってほしい」と語りました。
夫婦の勇気ある行動を称える
中村さん夫婦の勇気ある行動は、多くの人の心を打ちました。1月30日、竹原警察署の井本憲吾署長から、二人に感謝状が贈呈されました。「これ以上の被害を出さない一心で、無我夢中だった。表彰されてびっくりしています」と隆之さんは謙虚に語りました。彼らの行動は、動物愛護の精神を体現するものであり、多くの人々に勇気を与えるとともに、大久野島のウサギたちの安全を守る上で大きな役割を果たしました。
大久野島の未来へ
今回の事件は、動物愛護の重要性を改めて私たちに問いかけるものです。中村さん夫婦のような人々の存在が、大久野島のウサギたち、そして自然環境を守っていく上で、どれほど大切かということを改めて認識させられます。美しい自然と可愛いウサギたちが共存する大久野島。このかけがえのない島の未来を守るため、私たち一人ひとりができることを考えていきたいものです。