アメリカ旅客機と軍ヘリ衝突事故:トランプ前大統領、DEI推進を事故原因と主張し波紋

旅客機と軍用ヘリコプターの衝突事故という痛ましい出来事が、政治的論争の火種となっています。2025年1月29日、ワシントン近郊で発生したこの事故では、ポトマック川から67名の遺体が収容されました。30日、ドナルド・トランプ前大統領は記者会見を開き、事故原因はDEI(多様性、公平性、包括性)推進に基づく採用にあると主張し、波紋を呼んでいます。

事故の概要とトランプ前大統領の主張

アメリカン航空の子会社が運航するボンバルディア製旅客機と、米陸軍のブラックホーク・ヘリコプターが衝突したこの事故。捜査当局は原因究明に時間を要すると発表していました。ニューヨーク・タイムズ紙は、連邦航空局(FAA)の予備調査報告書を引用し、事故当時レーガン・ナショナル空港の管制塔は人員不足で、通常2人体制で行う旅客機とヘリコプターの管制を1人で行っていたと報じています。

旅客機とヘリコプターの衝突事故現場旅客機とヘリコプターの衝突事故現場

トランプ前大統領は、この事故をDEI撲滅運動の好機と捉え、民主党のジョー・バイデン前大統領やバラク・オバマ前大統領がDEI推進のためにFAAから優秀な職員を排除したと非難。「有能な人材が必要なのに、彼らは『白人が多過ぎる』という指示を出した」と主張しました。さらに、ピート・ブティジェッジ前運輸長官を名指しで批判し、「多様性を推し進め過ぎ、組織を混乱させた」と述べました。

副大統領、国防長官もDEI批判を展開

J・D・バンス副大統領とピート・ヘグセス国防長官も記者会見に同席し、DEIが有能なアメリカ人を要職から排除していると主張。極右の理論を、証拠を提示することなく繰り返しました。記者から事故原因が多様性かどうか問われると、トランプ前大統領は「そうだったかもしれない」と回答。この発言は大きな反響を呼びました。

ブティジェッジ氏、マーフィー上院議員らからの反論

ブティジェッジ前運輸長官は、X(旧Twitter)でトランプ前大統領を「卑劣」と非難し、「遺族が悲しむ中、嘘ではなく指導力を示すべきだ」と訴えました。民主党のクリス・マーフィー上院議員も、トランプ前大統領の発言に「うんざりだ」とXに投稿し、「事故はトランプ政権下で起きた。責任は彼にある」と批判しました。

トランプ前大統領の記者会見の様子トランプ前大統領の記者会見の様子

トランプ前大統領、強硬姿勢を維持

批判を受けながらも、トランプ前大統領はバイデン前政権下での「採用基準の低下」について調査し、不適格者を更迭するよう政府に指示する公式通達を出すなど、強硬姿勢を維持しています。この事故を巡る政治的対立は、今後ますます激化することが予想されます。

専門家の見解

航空安全の専門家、田中一郎氏(仮名)は、「DEIと航空管制業務の質の低下を直接結びつけるのは早計だ」と指摘。「人材育成、安全管理体制の構築など、多角的な視点から事故原因を分析する必要がある」と述べています。

まとめ

今回の事故は、航空安全の重要性を改めて問いかけるものです。DEI推進の是非は重要な議論ですが、事故原因を特定し、再発防止策を講じることこそが最優先事項です。政治的な主張に偏ることなく、冷静な議論と徹底的な調査が求められます。