医療崩壊の危機が叫ばれる中、医師の偏在化が大きな問題となっています。意外にも人口10万人あたりの医師数が最も少ないのは埼玉県。東京都に隣接するベッドタウン、川口市では深刻な医師不足が医療現場を逼迫している現状をAERA 2025年2月3日号の記事を元に深掘りします。
地方ではなく都市部で深刻化する医師不足の現実
地方の医師不足はよく耳にしますが、実は都市部でも深刻な問題となっています。人口10万人あたりの医師数で見ると、最も少ないのは埼玉県で、茨城県、千葉県と続きます。一方、徳島県、高知県、京都府は医師数が多く、地域による偏在が明らかです。
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人口増加が続く埼玉県川口市では、この医師不足が医療サービスの質に深刻な影響を与えています。埼玉協同病院の増田剛院長は「いざという時に医療が機能していない」と現状を訴えています。
インフルエンザ流行で露呈した医療体制の脆弱性
2025年1月のインフルエンザ流行時に、川口市では医療体制の脆弱さが露呈しました。救急患者の受け入れを断らざるを得ない状況が続出し、搬送先が見つかるまでに7時間も要するケースもあったといいます。クリニックの発熱外来もパンク状態となり、患者は受診すら困難な状況に陥っていました。
「都内へのアクセスが良いのだから、都内の病院を受診すれば良いのでは?」という声も聞こえてきますが、高齢化が進む中で都内への移動が困難な住民も増加しており、現実的な解決策とは言えません。
大学病院からの医師派遣に頼る医療体制の限界
川口市を含む南部医療圏(川口市、蕨市、戸田市)の人口は約80万人。これは山梨県や福井県に匹敵する規模ですが、県立病院も大学病院もありません。
地域の基幹病院は東京の大学病院からの医師派遣に頼っている状態ですが、これも安定的な体制とは言えません。医師不足が深刻化する中、大学病院の医局に入局する医師も減少傾向にあり、派遣医師の確保は年々難しくなっています。各病院の院長は毎年3月、医師の確保に頭を悩ませているという現状です。
医療食の専門家である佐藤先生(仮名)は、「医師の確保だけでなく、医療従事者全体の負担軽減、働き方改革も同時に進めていく必要がある」と指摘しています。
医師不足解決への道筋
医師不足は、地域医療の崩壊につながる深刻な問題です。医師の偏在化を解消し、質の高い医療サービスを全国民に提供するためには、抜本的な対策が必要です。
医師の働き方改革、地域医療へのインセンティブ強化、医学部定員の調整など、様々な施策が検討されていますが、早急な対策が求められています。
この問題に対する意識を高め、より良い医療体制の構築に向けて、私たち一人ひとりができることを考えていく必要があるでしょう。