コロナ禍でテレワークの普及や働き方の見直しが進み、東京一極集中にも変化の兆しが見られたが、それも束の間の出来事に過ぎなかった。経済活動が正常化するとともに、東京は再び吸引力を取り戻し、首都圏は3年連続の転入超過となった。特に目立つのが地方の若者と女性の転入だ。その背景には雇用や男女の待遇差の問題に加え、地方に根強く残る固定的な性別役割分担意識が課題として指摘されている。実際に「前時代的な故郷の価値観が苦手だった」と話す都内在住で地方出身の女性に話を聞いた。
東京圏が3年連続転入超過
東京が再び吸引力を拡大させている―。
総務省が先月発表した2024年の人口移動報告では、東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)の転入超過が13万人を超えた。
政府が地方創生に本格的に乗り出した2014年以降、一部の自治体では移住者の増加で人口減少を食い止めたり、コロナ禍真っただ中の2021年には東京への転入が14年以降で最少の5433人まで落ち込んだりもした。
このまま「東京一極集中」に歯止めがかかるかと期待されたのも束の間。コロナ禍が収束し、経済活動が正常化した2022年以降は、3年連続で東京圏の転入超過が拡大した。
なかでも目立つのが「若者」と「女性」の存在だ。
2024年に転出超過だった40道府県のうち、32道県では男性より女性の方が超過数が多かった。さらに東京圏の転入超過を世代別でみたところ、20〜24歳(8万6908人)▷25〜29歳(3万2065人)▷15〜19歳(2万827人)と、ほとんどが15〜29歳の若者層が占めており、進学や就職を機に、女性や若者が地方を離れ、首都圏に移っている実態が浮かび上がってきた。
その背景には、地方に魅力的な職場が少ないことや、男女の待遇差、固定的な性別役割分担意識が課題として挙げられている。専門家によると、『地方の集まりではお茶汲みは女性』『お祭りの時の女性の裏方の役割が重荷』など、地方に色濃く残る家父長制に根差した男尊女卑風土が女性たちを遠ざけることも指摘されている。