唐揚げ専門店、生き残りをかけた戦い:ブーム終焉から定着へ

日本の食卓で不動の人気を誇る唐揚げ。一時は専門店が急増し、ブームとも言える状況でしたが、コロナ禍後の原材料高騰や競争激化により、多くの店が閉店に追い込まれました。この記事では、唐揚げ専門店業界の現状と生き残りをかけた戦略、そして今後の展望について解説します。

唐揚げブームの終焉と淘汰の波

2023年には唐揚げ専門店の倒産が急増しましたが、2024年には減少に転じました。帝国データバンクの調査によると、2024年の倒産件数は16件で、前年比4割減となっています。倒産した企業の多くは小規模事業者で、閉店を含めるとさらに多くの唐揚げ専門店が市場から姿を消したと推測されます。

唐揚げ専門店の倒産状況を示すグラフ唐揚げ専門店の倒産状況を示すグラフ

背景には、コロナ禍の巣ごもり需要で急増した参入、原材料費の高騰、そしてコロナ禍後の需要縮小などが挙げられます。特に、輸入鶏肉や食用油、小麦粉などの価格高騰は、低価格戦略を前提としていた多くの小規模店にとって大きな打撃となりました。

生き残り戦略:付加価値とリピーター獲得

厳しい状況下でも、生き残りをかけた専門店による様々な取り組みが見られます。例えば、セントラルキッチン導入によるコスト削減、調理時間の短縮、弁当や総菜へのメニュー拡大など、付加価値を高める努力が続けられています。

食文化ジャーナリストの佐藤一郎氏(仮名)は、「消費者はもはや『安い唐揚げ』だけでなく、『美味しい唐揚げ』を求めるようになっている」と指摘します。専門店は、味や品質にこだわった商品を提供することで、リピーターの獲得に成功しているのです。

唐揚げ専門店のイメージ写真唐揚げ専門店のイメージ写真

大手チェーンの撤退も、生き残った専門店にとっては追い風となっています。過当競争が緩和される一方で、コンビニ唐揚げや冷凍食品などの競合製品は値上げ傾向にあり、専門店の価格優位性が再び注目されています。

ブームから定着へ:唐揚げ専門店の未来

タピオカティーのように、爆発的なブームを経て淘汰の時期を迎えた唐揚げ専門店。しかし、味と品質で勝負する専門店は、着実に顧客の心を掴み、定着の兆しを見せています。

一方で、おにぎり専門店など新たな競合の出現や、スーパーマーケットの唐揚げ強化など、競争環境は依然として厳しい状況です。今後の唐揚げ専門店は、高品質な唐揚げを提供し続けるだけでなく、新たなニーズを捉えた商品開発やサービスの提供が求められるでしょう。

日本の国民食とも言える唐揚げ。専門店は、進化を続けながら、私たちの食卓を彩り続けてくれることでしょう。