『秘密~THE TOP SECRET~』(カンテレ・フジテレビ系)第2話に池脇千鶴が出演する。池脇が演じるのはコンビニ店員の小島郁子。まじめに生きてきた小島は突然の凶行に走る。
【写真】池脇千鶴が40歳のホステスを演じた『その女、ジルバ』
事前予告のビジュアルを見て、現在の姿に驚いた人もいるかもしれない。池脇のドラマ出演は2024年4月期の『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系)第9話以来となる。意識障害で昏睡状態の奈緒(阿部久令亜)の母親・佳苗として、娘に呼びかける姿が胸を打った。
池脇には「女優」という言葉がしっくりくる。全身に役を投影し、悲劇のヒロインを演じきる。そうかと思えば、劇中であっと驚く変身を遂げて、魅惑的な笑顔をふりまく。老若男女に愛され、憧れられる存在。「女優」という言葉を聞いて浮かぶのは、そんなイメージだ。
『ASAYAN』(テレビ東京系)「三井のリハウス」第8代リハウスガールとして芸能界デビューした池脇。1999年には市川準監督『大阪物語』でキネマ旬報新人女優賞、毎日映画コンクール・スポニチグランプリ新人賞などを受賞するなど、演技の才能を開花。2001年にはNHK連続テレビ小説『ほんまもん』で主演を務め、若くしてスター街道を駆け上がった。『ジョゼと虎と魚たち』をはじめ、映画・ドラマにコンスタントに出演してきた。
ただ巧いだけではない親近感を感じさせるのが池脇である。そつなく役を演じ、原作のキャラクターになりきる憑依型の俳優が増えた昨今、池脇の演技は、画面の中心にいながら感情のひだに触れるような自然なリアルさがある。そのことをあらためて知らしめたのが、2014年公開の映画『そこのみにて光輝く』と、ドラマ『その女、ジルバ』(東海テレビ・フジテレビ系)だった。
『そこのみにて光輝く』で池脇が演じたのは、凄惨な背景を持つ女性である。生活のために男に身をゆだねる千夏の無表情で投げやりな空気は作品のトーンを決定づけていた。過去作とも共通する池脇の澄んだ眼差しと、はかなげな笑顔の奥からのぞく人生の哀しみに観る者は肺腑をえぐられる。ナチュラルな空気と不幸の影の漂うキャラクターを全身で演じることは、池脇のパブリックイメージでもあった。しかし、それが定着してタイプキャストされると、かえって演じ手の可能性を狭めることになりかねない。