【ワシントン=池田慶太】米国のトランプ大統領は4日、イスラエルとイスラム主義組織ハマスの戦闘で荒廃したパレスチナ自治区ガザを「長期所有」し、米国が再建を主導する構想を唐突に表明した。ガザ住民の域外移住は国際法に違反する可能性があり、実現のハードルが極めて高い構想が打ち出された背景としてトランプ氏への進言役の不在が指摘されている。
トランプ氏が1月の復帰後、初めてホワイトハウスに外国首脳を招いて開いた共同記者会見。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の横で、トランプ氏は「私が話をした誰もが、米国がガザを所有する考えを支持している」と根拠を示さずに主張した。
世界を驚かせたトランプ氏の構想は2段構えとなっている。がれきに埋もれたガザを整地し、ガザの全住民を域外に移住させる。その後、住宅を建てて世界中から人を呼び寄せ、地中海の保養地「リビエラ」のような観光地にするとトランプ氏は熱っぽく説明した。
ニューヨークを拠点に「不動産王」に上り詰めたトランプ氏は、ガザに不動産としての価値を見いだしたとみられる。就任初日、ガザについて「海に面した最高の天候の素晴らしい場所だ」と記者団に語っていた。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)によると、ガザ所有構想はトランプ氏と少数の側近らの間で秘密裏に検討された。直前には中東担当特使のスティーブン・ウィトコフ氏がガザを訪問し、トランプ氏に状況を報告した。ウィトコフ氏はトランプ氏のゴルフ仲間で不動産開発を本業とするビジネスマンだ。
しかし、構想を慎重に考え抜いた形跡は乏しい。米国とイスラエルが共に批准しているジュネーブ条約は住民の強制移住を禁じており、実行に移せば条約違反に当たる可能性がある。
米国がガザの直接管理に乗り出した場合、治安維持のため米軍の長期派遣が必要になると想定される。米軍がハマスのテロの標的となり、テロ掃討を目的に米軍が駐留を続ければ、イラク戦争後に中東紛争から抜け出せなくなった過去の失敗を繰り返すことになりかねない。世界の紛争への関与を避けるトランプ氏の外交方針にも反する。