【カイロ=佐藤貴生】パレスチナ自治区ガザで住民に食料など物資を配給する「ガザ人道財団(GHF)」の事業を巡り、批判が高まっている。ガザで作業を始めた5月末以降、配給拠点の周辺では約650人が殺害された。国連主導の際に約400カ所あった配給拠点は中部と南部の4カ所に減り、腹を空かせて訪れた住民にイスラエル軍兵士らが発砲、殺害した疑いも浮上している。
イスラエル有力紙ハーレツ(電子版)は6月27日、同国軍兵士らの証言として、配給拠点の近くに配置された兵士らが上官の指示により、殺到する住民を追い払うため発砲していると伝えた。配給は毎朝1時間に限られ、それ以外の時間帯に来た住民にも発砲しているという。
■毎回、1~5人殺害
兵士の1人は同紙に「配置に着いたときは毎回、1~5人が殺害されている」と述べ、「人命の損失など何の意味もない」と話す予備役兵もいた。証言した人々はイランとの交戦などを通じ、軍がガザへの国際社会の関心をそらすよう努めたと考えているという。イスラエルは外国メディアのガザ入域を禁じている。
また、AP通信は7月3日、GHFの米国人スタッフ2人の証言や入手動画を基に、配給拠点に押し寄せるパレスチナ人にスタッフが実弾を発砲していると報じた。2人は「罪もない人々が傷つけられている」などと訴えた。GHFには米国の民間軍事会社などが協力している。
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のラザリニ事務局長は、GHFの手法は「死の罠(わな)」だと非難。170超の人道支援団体も共同声明を発表し、GHF主導の配給事業の停止を求めた。
■「最も残酷なジェノサイドの一つ」
このほか、国連のアルバネーゼ特別報告者は3日、イスラエルのパレスチナ占領地での行いは「近代史上、最も残酷なジェノサイド(集団殺害)の一つ」だとし、日米などの45社以上が関与して支援していると批判するなど、イスラエルへの反発が広がっている。
GHFは国連中心の物資配給に不信感を抱く米、イスラエルを後ろ盾に、5月下旬からガザで物資配給を行っている。イスラエルはこれに先立ち、約2カ月半も物資のガザ搬入を遮断し、飢餓の拡大が懸念されていた。