父親の帰化で戸籍抹消…40年後の衝撃、国籍回復ならず 最高裁で確定

日本への帰化を隠していた父親のせいで、韓国で生まれ育ち、韓国人として生きてきたAさんの人生が大きく揺るがされました。40年近くもの間、自分が韓国人だと思い込んでいたAさんは、父親の帰化が発覚したことで戸籍を抹消され、国籍回復を求めて裁判を起こしましたが、最高裁で敗訴が確定。一体何が起こったのでしょうか?

40年間の真実、父親は日本人だった

Aさんは1980年代、韓国人の両親のもとに韓国で生まれました。何の疑いもなく韓国人として人生を歩んできたAさんでしたが、2021年、衝撃の事実が明らかになります。なんと、父親は1974年に日本に帰化していたのです。この事実は、大邱出入国外国人事務所長からの告示によって発覚。Aさんの父親は、日本人と結婚し韓国国籍を喪失したにもかかわらず、その事実を隠し、Aさんの母親と結婚、Aさんをもうけていたのです。

alt=韓国最高裁判所の建物alt=韓国最高裁判所の建物

国籍回復の道は閉ざされる

父親の帰化により、旧国籍法に基づきAさんの戸籍は抹消されました。韓国国籍を取り戻そうと奔走するAさんは、2004年末に有効期限が切れた「母系特例国籍取得制度」に望みを託します。この制度は、国籍法改正前に生まれた人で、母親が韓国国籍を持つ場合、韓国国籍を取得できるというものでした。

しかし、法務部は期限切れを理由にAさんの申請を却下。Aさんは、父親の帰化を知らなかったことが「天災地変、その他不可抗力の理由」に該当すると主張し、ソウル行政裁判所に提訴しました。

裁判所の判断とAさんの苦悩

一審、二審、そして最高裁と、裁判所はAさんの訴えを退けました。裁判所は、父親が帰化を隠していたことはAさんの主観的な事情であり、不可抗力とは認められないと判断。さらに、Aさんが父親と連絡を取っていた期間に帰化の事実を知る機会があったはずだと指摘しました。こうして、Aさんの国籍回復の道は閉ざされてしまったのです。

専門家の意見

国際法に詳しい山田弁護士(仮名)は、「国籍問題は非常に複雑で、個々の事情によって判断が難しいケースもある」と指摘。「Aさんのケースは、父親の帰化という事実が長期間隠蔽されていた点が問題を複雑にしている」と分析しています。

揺らぐアイデンティティ、そして未来

Aさんのケースは、国際結婚や国籍取得をめぐる複雑な問題を浮き彫りにしています。幼い頃から韓国人として生きてきたAさんにとって、国籍を失うことはアイデンティティの喪失にもつながる深刻な問題です。Aさんのような境遇に陥る人を減らすためには、国籍法の運用や国際的な連携など、更なる制度の整備が必要と言えるでしょう。