「年金が少ない…」なぜ? 定期便の金額と実際の手取り額に潜む落とし穴

会社員の給与から毎月天引きされる年金保険料。負担は決して軽くありません。その分、年金の受け取りを楽しみにしている人も多いでしょう。しかし、いざ年金受給という段になり、受け取れる「年金の手取り額」が、これまでの「見込額」より大幅に少ないことに気づき愕然とするケースが後を絶ちません。これはなぜ起きるのでしょうか。ねんきん定期便などに記載される金額と実際の手取り額の違い、そしてそれにまつわる意外な落とし穴について解説します。

年金受給を控えた日本人会社員が、ねんきん定期便記載額と実際の手取り額の違いに驚いている様子のイメージ。老後資金計画にも関わる重要なポイント。年金受給を控えた日本人会社員が、ねんきん定期便記載額と実際の手取り額の違いに驚いている様子のイメージ。老後資金計画にも関わる重要なポイント。

年金見込額を確認する方法とその重要性

自分が将来いくら年金を受け取れるかを知ることは、老後の生活設計において非常に重要です。主な確認方法は二つあります。

ねんきん定期便

日本年金機構から年に一度、誕生月に郵送されます。通常はハガキですが、35歳、45歳、59歳の節目には封書で届き、これまでの全期間の年金記録が詳しく通知されます。この定期便には、将来受け取れる年金の見込額が記載されています。

ねんきんネット

日本年金機構がオンラインで提供するサービスです。こちらを利用すれば、自身の年金記録や将来の年金見込額をいつでもインターネット上で確認できます。

これらのツールで確認できる年金見込額は、あくまで現時点での情報に基づく概算であり、また税金や社会保険料が控除される前の「額面」の金額です。多くの人がこの点を見落とし、「書かれている金額がそのまま手取りになる」と勘違いしてしまいます。また、過去の年金納付記録に漏れがないかなどを確認するためにも、定期的なチェックは欠かせません。

定期便の金額と実際の手取り額の大きな違い

ねんきん定期便に記載されている金額は、残念ながらそのまま全てを受け取れるわけではありません。ここが「年金の手取り額」で多くの人が直面する現実です。

例えば、Aさん(64歳)は長年の勤務を終え、数ヶ月後に退職を控えています。毎年受け取るねんきん定期便で、自身の年金見込額が月16万円程度と把握していました。妻の見込額と合わせれば、退職金や貯蓄と合わせて老後も安心だと考えていました。しかし、実際に年金が振り込まれる段になって、この金額から税金や社会保険料が差し引かれることを知ります。詳しく調べた結果、実際の手取り額は月14万円ほどになることが判明し、その差額に愕然としました。

この差は、年金が「所得」とみなされ、一定額以上の場合に所得税や住民税の対象となるためです。さらに、医療保険料や介護保険料も年金から天引きされます。これらの控除額は年金額や住んでいる自治体によって異なりますが、一般的には年金額面の10〜15%程度が差し引かれることが多いです。

年金受給に関するその他の注意点

年金の手取り額以外にも、年金受給にあたってはいくつか知っておくべき点があります。

年金は自動的には振り込まれない

基本的なことですが、「年金は何もしなくても自動的に振り込まれる」と考えている人もいます。実際には、年金受給権が発生する年齢(原則65歳)が近づくと、日本年金機構から「年金請求書」が送付されます。この請求書に必要事項を記入し、必要書類を添えて提出する手続きが必要です。手続き完了後、約1〜2ヶ月で年金証書などが届き、年金受給が開始されます。引っ越しなどで住所が変わった際は、忘れずに手続きを行うことが大切です。

加給年金という「隠れ年金」

厚生年金に20年以上加入していた人で、65歳到達時点で生計を維持している65歳未満の配偶者や、18歳未満の子どもがいる場合、「加給年金」が上乗せされる制度があります。配偶者が65歳になると、要件を満たせば「振替加算」に引き継がれます。

加給年金の金額は、配偶者が年額239,300円、子ども(第1子・第2子)が各239,300円、第3子以降が各79,800円(金額は改定される場合があります)。重要な点は、この加給年金は対象者であっても自動的には加算されず、「老齢厚生年金・退職共済年金 加給年金額加算開始事由該当届」という別途の申請手続きが必要であるということです。ねんきん定期便には記載されないため、自身が対象となるか確認し、忘れずに申請することが大切です。

まとめ

年金見込額と実際の手取り額には、税金や社会保険料の控除という大きな壁があります。ねんきん定期便やねんきんネットで確認できる金額はあくまで額面であり、手取りはそれより少なくなることを理解しておく必要があります。また、年金受給は申請手続きが必要であり、加給年金のような別途申請が必要な制度も存在します。

これらの「落とし穴」を知っているかいないかで、老後資金計画に大きな影響が出ます。自身の年金記録や見込額を定期的に確認し、手取り額を正しく把握した上で、計画的な老後準備を進めることが、安心して暮らすための第一歩となります。

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