ロシアのウクライナ侵攻を批判していた歌手、ヴァディム・ストロイキン氏(59歳)が、サンクトペテルブルクの自宅マンションから転落死した。警察による捜索中に起きたこの悲劇は、ウクライナ軍への資金援助疑惑をめぐる捜査と関連があるとみられ、物議を醸している。
捜査中の不可解な転落死
5日、サンクトペテルブルクにあるストロイキン氏の自宅マンションに警察が家宅捜索に入った。捜索理由は「ウクライナ軍への資金援助」疑惑。独立系メディア「モスクワ・タイムズ」によると、ストロイキン氏は捜索中に「水を飲む」と言い残してキッチンへ行き、10階の窓から転落したという。
alt 転落死したロシア人歌手ヴァディム・ストロイキン氏の自宅マンション
テレグラムチャンネル「マッシュ」は、ストロイキン氏がテロ組織への加担で起訴された場合、最大20年の懲役刑に処される可能性があったと報じている。捜査のプレッシャーから逃れようとしたのか、それとも何らかの力が働いたのか、真相は未だ不明だ。現在、当局による調査が進められている。
プーチン政権への批判と不穏な空気
ストロイキン氏は、SNSを通じてウクライナ侵攻を公然と批判してきた人物として知られている。2022年3月には、プーチン大統領を名指しで批判し、裁判を受けるべきだと主張する投稿を行っていた。また、野党指導者ナワリヌイ氏の獄中死についても、プーチン政権への批判を強めていた。
alt ロシア人歌手ヴァディム・ストロイキン氏
彼の死は、プーチン政権に批判的な人物に対する弾圧の象徴として捉える見方もあり、ロシア国内の言論の自由に対する懸念がさらに高まっている。
ロシア高官の転落事故が相次ぐ
ストロイキン氏の転落死は、近頃ロシアで相次いでいる高官の転落事故とも重なり、不穏な空気を醸し出している。4日には、反独占局カレリヤ共和国支部長が自宅マンションから転落死、同日にはモスクワで捜査委員会の法医学センター長が転落し重傷を負う事件が発生した。
これらの事件との関連性は不明だが、一連の出来事はロシア社会の不安定さを浮き彫りにしていると言えるだろう。
ギタリストとしての軌跡と突然の終焉
チェリャビンスク出身のストロイキン氏は、エカテリンブルクを経てサンクトペテルブルクに移住。ラジオ局の音楽番組制作や旅行会社経営など、多彩な経歴を持つ。近年はギター講師として活動しながら、演奏活動も続けていたという。
才能あふれる音楽家の突然の死は、多くのファンに衝撃を与えている。彼の音楽は、これからも人々の心に生き続けるだろう。
真相究明と情報公開の必要性
ストロイキン氏の死をめぐる謎は深く、今後の捜査の進展が待たれる。独立した調査による真相究明と情報公開が求められている。