日本の裁判官と聞くと、冷静沈着で公正、高い知性を持つエリートというイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。しかし、現実は必ずしもそうではないかもしれません。元裁判官であり法学の権威である瀬木比呂志氏は、著書『絶望の裁判所』の中で、日本の裁判所の驚くべき実態を明かしています。本記事では、裁判官の多忙神話の真偽や、彼らの仕事内容について深く掘り下げていきます。
裁判官の多忙さは本当か?日米の比較から見えてくるもの
日本の民事裁判官は多くの訴訟を抱えていると言われていますが、それは日本独自の多数事件同時並行審理方式によるものです。この方式では、裁判期日ごとに訴訟記録を読み直す必要があり、必ずしも効率的とは言えません。瀬木氏の経験では、年間の新受・既済事件数は約360件、そのうち比較的重要な事件は約90件とのことです。
一方、アメリカの連邦地裁では、裁判官一人あたり年間約480件の事件を担当しています(モリソン・フォースター外国法事務弁護士事務所『アメリカの民事訴訟〔第2版〕』)。制度の違いから単純比較はできませんが、連邦地裁の事件は内容的に重要なものが多く、日本の裁判官の多忙さが際立って多いとは言い切れない側面もあります。
日本の裁判所
裁判官の仕事内容:事件処理と意味のない会合
日本の裁判官の関心は「事件処理」に集中していると言われています。迅速かつ円滑に事件を処理することを重視し、些細な紛争は淡々とこなし、冤罪事件も軽視する傾向があるという指摘もあります。権力や政治家、大企業などの意向に沿った秩序維持、社会防衛を優先する傾向があると瀬木氏は述べています。
また、裁判官の研究会や委員会などの会合も、事務総局の方針を具体化するためのものや、親睦を深めるための飲み会が中心で、学術的な研究会とは性格が大きく異なります。特に刑事裁判では飲み会が多いことが知られています。これらの意味の乏しい会合を減らすだけでも、実質的な仕事に使える時間は増えるはずです。
裁判官の会合
裁判官の神話:国民を欺く実態
裁判官は多忙で、常に公正中立な判断をしているというイメージは、国民を欺く「神話」と言えるかもしれません。瀬木氏は、裁判官の仕事の実態を明らかにすることで、司法制度の改革を訴えています。司法への信頼を取り戻すためには、裁判官の意識改革だけでなく、制度の改革も必要不可欠です。
司法の未来:私たちにできること
日本の司法の未来を考える上で、国民一人ひとりが司法に関心を持ち、問題点を認識することが重要です。瀬木氏のような内部告発者の声に耳を傾け、司法の透明性を高めるための議論を深めていく必要があります。 真に公正で信頼できる司法制度を実現するために、私たち一人ひとりができることを考えていきましょう。