ホンダと日産の経営統合協議が破談となり、日産の経営状態に注目が集まる中、ホンダの未来はどうなるのでしょうか? 本記事では、モータージャーナリスト国沢光宏氏の考察を基に、ホンダの現状と未来への展望を探ります。
揺らぐホンダの現状
2019年には世界販売台数518万台を誇ったホンダですが、2024年には381万台と、5年間で約3分の2にまで減少しました。韓国や中国メーカーの台頭に押され、シェアを奪われ続けている現状は深刻です。次世代電子プラットフォーム開発の費用負担も重く、日産との提携を模索したのも無理はありません。しかし、統合協議は破談。技術者同士のプライドがぶつかり合い、電子プラットフォーム開発の進展は容易ではないでしょう。
ホンダの新型EV「0サルーン」
財政基盤は盤石でも…
創業者の本田宗一郎氏の「良い物作り」の精神を受け継ぎ、堅実な財政運営を続けてきたホンダ。バブル崩壊やリーマンショック時にも黒字を維持してきました。しかし、販売台数の減少は深刻な問題です。このままでは5年後、10年後、財政基盤が揺らぐ可能性も否定できません。
GMとの自動運転協業の失敗、ソニー・ホンダ・モビリティの苦戦、そしてプランBを持たない電気自動車戦略など、三部社長の経営判断には疑問符が付きます。財政基盤が揺らぐ前に、抜本的な改革が必要不可欠です。
三部体制の功罪
日産との協業は、互換性のない両社のストロングポイントを考えると、共倒れのリスクがありました。ホンダに必要なのは、トヨタのように、ヒョンデやBYDといった新興勢力よりも魅力的なクルマ作りを実現することです。しかし、現在の三部体制では、それは難しいと言えるでしょう。
デザインへの偏重
ホンダのデザインは、三部社長と親しい南氏が主導しています。南氏は低くてワイドなクルマを好み、「ホンダ0」のセダンタイプ「0サルーン」はランボルギーニのようなスーパーカー風デザインです。しかし、現在のアメリカ市場はSUVが主流。セダンの需要は低迷しており、市場のニーズを捉えきれていないと言わざるを得ません。ヴェゼルを除く現行ホンダ車は、南氏の好みに偏っているとの指摘もあります。
真のクルマ作りへの回帰
ホンダは、市場のニーズを的確に捉え、魅力的なクルマ作りに立ち返る必要があります。そのためには、自動車業界に精通したリーダーシップが必要不可欠です。三部社長の任期は通常2027年までですが、社内からの評判は芳しくありません。日産との統合協議における責任感の欠如も問題視されています。一日も早く、真のクルマ作りを理解するリーダーにバトンタッチすることが、ホンダの未来を切り開く鍵となるでしょう。
未来への期待
ホンダには、創業以来の「良い物作り」のDNAが脈々と受け継がれています。現状の課題を克服し、魅力的なクルマを生み出すことで、再び世界を席巻するポテンシャルを秘めているはずです。今後のホンダの動向に、期待を込めて注目しましょう。