この頃しみじみと感じるのは「昭和は遠くなりにけり」ということだ。昭和最後の年1989(昭和64・平成元)年からすでに36年が過ぎ、当時を知らない世代も増えている。
このほど、今年で設立130周年になる東洋経済新報社の写真部に保管されていた昭和の街角写真がデジタル化された。本連載では、そこに写し出されている風景から時代の深層を読み取っていく。
第5回となる今回は、1970年代以降の百貨店「華やかなりし時代」から現代までの写真を紹介する。
第1回:『60年前の「アジアっぽい東京」が今の姿になるまで』
第2回:『40年前の「牧歌的な渋谷」が外国人の街になるまで』
第3回:『「家電→PC→メイド喫茶」秋葉原“主役交代”の歴史』
第4回:『焼け野原だった「歌舞伎町」が大歓楽街になるまで』
■消えゆくデパート
東京都心のデパートの店舗が、次々になくなっている。この5年ほどの間に、新宿西口の小田急新宿店本館、渋谷駅と一体化していた東急東横店、そして渋谷の東急本店が閉店。
その理由には、開店後50年以上が経過した建物の老朽化のほか、百貨店という業態が現在の消費スタイルに合わなくなってきたことも挙げられている。
いずれの店舗も再開発後の建物での百貨店営業は予定されていないようだ。昭和は戦前戦後を通して百貨店は小売店の王様的な存在だったが、今や斜陽産業になってしまったのか。
【画像28枚】1960年代から現代までの百貨店の盛衰を写真で見る
ここ数年、池袋で騒動になっていたのは、池袋西武の存続問題。2023年、セブン&アイホールディングス傘下にあった「そごう・西武」は外資系ファンド・フォートレスに売却され、フォートレスは池袋西武の巨大な店舗建物の約半分をヨドバシHDに売却。
池袋西武の店舗だった建物の約半分は今後、ヨドバシカメラの店舗となる。一方の西武百貨店では、縮小した店舗を、今夏オープン予定でリニューアル中だ。
池袋駅東口の巨艦・西武百貨店は、近年も全国の百貨店店舗売り上げ高のベスト3にもランクインしていたというのに、セブン&アイがそごう・西武を売却した理由は、百貨店事業の赤字だった。
■「ハレの日」は家族でデパートだった頃
昭和の戦前戦後は、デパートは家族で休日に出かける買い物と娯楽の場だった。お父さんの背広や靴、お母さんの宝石や着物、子どもたちのよそ行きの服や誕生日プレゼントのおもちゃなどの買い物には、ハレの場であるデパートに出かけるのが恒例だった。