【千夜一夜】シリア国境の町の人々 国旗に込めた思い





トルコ軍の車列に手を振るシリア国境に近いアクチャカレの地元住民ら=10月9日、トルコ(AP)

 トルコのイスタンブールを走る地下鉄の車内で10月29日、老人の小楽団に出くわした。この日はトルコの建国記念日で、演奏しながら行進する姿に乗客らは大きな拍手を送っていた。

 イスタンブールには以前から多くのトルコ国旗が飾られているが、その数は前より増えた気がする。トルコ軍がシリアの少数民族クルド人勢力を攻撃したことで、トルコ民族主義が高揚していると肌で感じた。

 一方、この直前に訪れたシリアとの国境の町、アクチャカレはトルコ軍の越境攻撃を受けて緊張に包まれていた。アラブ系やクルド人が主体の町では、モスク(イスラム教礼拝所)や学校にシリア側から多数の砲弾が着弾したという。

 アクチャカレの町にも多くのトルコ国旗が垂れ下がっていた。しかし、「イスタンブールとは国旗掲揚の意味が異なる」と地元記者はいった。トルコ民族主義者の嫌がらせや、反体制派として治安部隊に目をつけられるのを避けるため、アラブ系やクルド人が国旗を示して「私はトルコの市民であり、体制を支持している」と訴えているのだ。

 トルコによるシリア攻撃はトルコ民族主義だけでなく、同国内のクルド人の民族意識も刺激した。掲げられた国旗への思いは同じとは限らぬ。ぎすぎすした対立感情も透けてみえる。(佐藤貴生)



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