重度知的障害の千頭さん、施設を出て一人暮らしを実現!その秘訣とは?

東大阪市に住む44歳の千頭雄介さんは、重度の知的障害と自閉症、そしてそれに伴う強度行動障害を抱えています。長年、入所施設や精神科病院での生活を余儀なくされてきましたが、今ではなんと一人で長屋暮らしを実現しています。この記事では、千頭さんがどのようにして地域生活をスタートできたのか、その背景や支援のあり方を探ります。

激しい行動障害と施設での生活

千頭さんは幼い頃から言葉で意思表示をすることができず、10代になると自傷行為や暴力・破壊行動といった強度行動障害が現れ始めました。母親の靖子さん(仮名)は「息子に殺されると思った」と振り返るほど、その行動は激しく、家庭での生活は困難を極めました。

alt="麦茶を飲む千頭さんとヘルパー"alt="麦茶を飲む千頭さんとヘルパー"

高校生の頃からは入所施設やグループホームでの生活が始まりましたが、施設からの飛び降りによる骨折など、環境に馴染めず苦労が続きました。靖子さんは「きっと『こんなところにいたくない』という意思表示だったのでしょう」と、息子の苦悩を理解していました。その後も精神科病院での生活や身体拘束など、千頭さんの居場所は定まりませんでした。

地域生活への転機と「創思苑」の支援

転機が訪れたのは2022年。東大阪市の社会福祉法人「創思苑」が千頭さんの地域生活支援を開始しました。「創思苑」はグループホームや通所施設の運営を通して、障害者の自立生活を支援する団体です。知的障害のあるカップルが共に暮らす支援や、出演者もスタッフも知的障害者という画期的なYouTube番組の制作など、先進的な取り組みで知られています。

alt="ヘルパーと帰宅する千頭さん"alt="ヘルパーと帰宅する千頭さん"

「創思苑」はまず、千頭さんを運営するグループホームに体験入居させましたが、他の入居者との生活に馴染むことができませんでした。しかし、諦めずに千頭さんの特性に合わせた支援を模索し続けました。

重度訪問介護サービスと一人暮らしのスタート

「創思苑」は千頭さんに「重度訪問介護」サービスを提供することにしました。このサービスにより、ヘルパーが日常生活の様々な場面をサポートすることが可能になります。 千頭さんは一人で暮らすためのスキルを徐々に身につけていきました。

alt="千頭さんの母、靖子さん"alt="千頭さんの母、靖子さん"

そしてついに、千頭さんは念願の一人暮らしをスタートさせました。慣れない環境での生活に不安もありましたが、ヘルパーのサポートを受けながら、少しずつ自立した生活を築いていきました。靖子さんは「息子は大きな音が苦手。今思えば、一人暮らしが合っていたのかもしれません」と話しています。

一人暮らしの現在と未来

現在、千頭さんはヘルパーの北村賢治さんと共に穏やかな日々を送っています。言葉でのコミュニケーションは難しいものの、行動を通して意思表示を行い、麦茶を一緒に飲むなど、心温まる交流を築いています。自傷行為も減少しており、地域生活への適応を見せています。

千頭さんの事例は、強度行動障害を持つ人でも、適切な支援があれば地域で自立した生活を送ることができるという希望を示しています。「創思苑」のような先進的な取り組みが、今後さらに多くの障害者の生活を豊かにしていくことが期待されます。