「本物のバカだった…」世界最大級の美術館から「古代の頭像」盗んだ犯人が小さなハートを刻んだワケ


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● 1979年に起きたヘルメス像の消失事件 戻った頭像には謎の刻印が……

 私はある日の午後、古代ギリシャ・ローマ美術の展示エリアに配置された。そのとき、ベテランの老警備員であるホワイトホール氏が、何の変哲もない大理石製のギリシャの頭像のようなものを指差して言う。「これが誰かわかる?」

 私は知らなかった。

 「ヘルメスだよ。これがグランド・セントラル駅のロッカーに入っていたというのは知ってる?」

 それも私は知らなかった。

 「そう、じゃあ教えてあげるよ。私がここで働き始めてまだ間もないころ、1979年だったかな。聞くところによると、その日もふだんと変わらない日だったらしい。ただ、市内でツタンカーメン展が開催されていた。私たちが経験したなかでは最大のショーだよ。調べてみればわかる。だが、それがこの事件に関係していたのかどうかはわからない。おれにわかるのは、ギリシャ美術の展示エリアを担当していたある不運な警備員が振り返ってみると、それまで台座の上に確かにあったものがなくなっていたということだけだ。

 そして、それから数日が過ぎた2月14日、バレンタインデーの日に、警察に情報が届いた。このヘルメス(ちなみにヘルメスは盗人の守護神なんだそうだ)を探しているのなら、グランド・セントラル駅のロッカー番号何番を見てみるといい、とな。そこでサイレンを鳴らしながら駅に急行し、古びたバールを取り出し、ロッカーをこじ開けてみると、言われたとおり、このうつろな2つの眼窩と目が合ったというわけさ」

 私たちは2人でその頭像を見る。

 「だが、奇妙なのはそこじゃないんだ。ここを見てみな。左目の少し上のところ……ここには以前から、大理石に小さなハートマークが刻まれていた。誰が何のためにそうしたのかもわからないし、偶然なのかどうかもわからない。とにかくそれは以前からあった。おそらくは何世紀も前からな。ところが」。そこでホワイトホール氏は不必要に声をひそめた。「ヘルメスが無事にここへ戻ってきたとき、右目の上にも第2のハートマークが刻まれていた。そろいのハートだよ。左目とそろいのハートが、右目にも新たに刻まれていたんだ!本当だよ、ブリングリーさん。調べてみるといい」(あとで確かめてみたところ、本当だった)



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