コメ価格が高騰する中、小泉進次郎農林水産相は6日の会見で流通業者の利益構造に疑問を呈しました。特定の卸業者に対する「利益500%」発言は波紋を呼び、業界からの反発を招いています。また、農水省自身の政策失敗検証への姿勢も問われる事態となっています。
小泉農水相、流通業者の利益構造に疑問呈す
小泉農水相は6日、コメ価格高騰を巡り、ある卸業者について2025年1~3月期の決算でコメ事業の営業利益が約4.9倍になったことに触れ、「利益が500%。どういうことなんだろうと、普通は思う」と述べ、集荷や卸など流通段階の利益構造を明らかにする考えを示しました。
小泉進次郎農水相、コメ価格高騰に関する会見で流通業者に言及
業界からの反発「薄利が急増に見えるだけ」
しかし、批判の対象となった木徳神糧は2024年1~3月期の営業利益率がわずか1.4%で、2025年同期は5.0%でした。これは一般的に優良とされる5%のレベルに達したに過ぎず、もともと利益幅が小さかったため、わずかな増加率が大きく見えたにすぎないと指摘されています。ある卸の担当者は、「コメ卸は大量仕入れ・大量販売で、これまで1~2%の薄利でやってきた。5倍になっても暴利と呼ばれる水準ではない。切り取りで悪者にされるのは我慢ならない」と猛反発しつつも、「調査をするというのなら、しっかり対応する」と述べています。
薄利多売のコメ流通と価格転嫁の現実
コメは従来、スーパーなどで牛乳や卵と並ぶ「白物」、つまり特売の目玉として扱われ、長年薄利多売のビジネスモデルが根付いていました。飼料高騰などによる牛乳や卵の価格転嫁が進む一方、コメは政府の価格維持政策もあり安価に抑えられがちでした。卸業者は、規模の大きいコンビニや外食チェーンなどへの価格転嫁が難航していましたが、ここに来てようやくタイムリーに反映されるようになり、これが利益増加の一因となっています。ある担当者は、「これまでは低い利益率、時には赤字を出しても、ルールを守ってきた」と、業界のこれまでの苦労をにじませました。
農水省の政策検証姿勢「身内に甘い」批判
これまでの失策が指摘されてきた農水省のコメ政策への対応について、小泉農水相は「率直に、何がうまくいかなかったのか、これをしっかりと分析をして、反省があれば率直に反省を述べて、前を向いていくのは当然」と述べました。しかし、現状は「今までの政策に対する反省などを、職員と率直に意見交換している」段階にとどまり、「民間の有識者による検証は考えていない」とし、外部検証を否定する姿勢を示しました。
農水省のコメ政策検証への姿勢を示す小泉進次郎農水相
コメ価格高騰を巡る小泉農水相の流通批判は、業界の実態との乖離を指摘され反発を招いています。また、農水省自身の政策検証を内部にとどめる姿勢も「身内に甘い」との批判の的です。強力な発信力で安い備蓄米の放出をアピールする小泉氏ですが、消費者が求める市場価格全体の沈静化は道半ばであり、政府に甘く民間企業を批判する姿勢は、「小泉劇場」への国民の関心を冷ます一因となり得ると指摘されています。