不動産関連情報を発信するいえらぶGROUPによると、東京都墨田区など一部地域では、家賃が1.5倍も高騰! 物価高はすでに我々の住まいにも影響を及ぼしていたのだ――。加速する値上げで家を失った人たちの声を聞いた。
半年以内の退去を迫る業者も。立ち退きトラブルも多発
賃貸物件を巡るトラブルは家賃の値上げだけではない。千代田区のマンションに暮らす勝又晃さん(仮名・43歳)は、’24年10月、突如立ち退きを迫られ愕然とした。
「最寄り駅から徒歩5分、120㎡超えで月20万円という、千代田区の中ではかなり良心的な金額の物件に住んでいます。もとはこの土地を所有していた裕福なおばあさんが大家として管理していましたが、’24年8月に外資系企業に物件が売られ、その2か月後には日本の法人へと所有者が代わりました。周辺の住人に聞くと、どうやらこの一体の地価が上昇しているらしく、住居人である僕ごと土地が転がされているようなのです」
「クレーマー呼ばわりされ本当に心外」
オーナーが代わったことにより、勝又さんの暮らしは脅かされた。
「なんの挨拶もなしに、’25年3月までに退去するよう迫る手紙と解約通知書、解約合意書が一方的に届きました。解約合意書には『乙は物件の解約・立ち退きに対して意義を申し立てない』との文言もあり、とても同意できるものではありません。退去に応じたら引っ越し費用40万円は出すとのことですが、立ち退き料の相場よりも相当低い額です」
勝又さんはすぐに面談の場を取りつけ担当者に抗議した。
「面談では『このマンションの住人の中で、あなたが一番怒っている』と、クレーマー呼ばわりされ本当に心外でした。それでも、今と同条件のマンションを用意するか、然るべき費用を払うなら立ち退きに応じると交渉しましたが、いまだ向こうから回答はありません」
告知された立ち退きの日付も迫り、不安な日々を過ごしている。
「入居者を追い出したい」オーナーが増加しているワケ
突然の立ち退き要求など、賃貸物件を巡るトラブルについて、「コロナ禍が落ち着いた’23年あたりから相談件数が増えている」と話すのは弁護士の亀井正貴氏だ。
「例えば、私がよく相談を受ける大阪・ミナミだと5億円だった土地が8億円で売れたり、築40年ほどの建物が立っている90坪の土地が10億円で買い手がついたりと、不動産はコロナ明けから景気がいい。物件の入居者を昔と同じ相場の家賃で住まわせるより、インバウンド需要に対応した民泊を運営したり、都市部なら建物を壊してホテルを建ててもお釣りがきます」
そのため、不動産バブルで稼げるタイミングで、入居者を追い出したいと考えるオーナーが増加しているという。
「強引な立ち退き勧告を出したり、住民に自発的に出ていってもらうために、あえて大幅な家賃アップを告知するオーナーも存在します。もし、自分がそうした目に遭ったら、無料相談でもいいので弁護士に相談するのが最善。家賃の上げ幅を5万円から1万円に抑えることができたり、立ち退き料の金額を増やしたりできるケースもあります」
取れる手段を講じ、なんとか住まいを死守したい。
【弁護士・亀井正貴氏】
元大阪地検検事。大阪弁護士会所属。大手不動産会社・マンション管理会社の顧問弁護士を務め、民事・刑事事件を多数担当している
取材・文・撮影/週刊SPA!編集部
―[物価高で[家を失った人たち]の悲劇]―
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