オーストラリアで、糖尿病を患う8歳の娘に必要なインスリン投与を宗教的信念に基づき中止し、死に至らしめた両親に禁錮14年の判決が下されました。この痛ましい事件は、医療と宗教の対立、そして親の責任について改めて私たちに問いかけています。
宗教的信念と医療ネグレクト:少女の悲劇
2022年1月、クイーンズランド州ブリスベン郊外の自宅で、8歳の少女が糖尿病の合併症で亡くなりました。少女は19年に糖尿病と診断され、インスリン治療を受けていましたが、父親は5日前に「娘はもう治療を必要としない」と宣言し、投与を中止していました。
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両親が所属する宗教団体のメンバー12人も、両親にインスリン治療中止を説得していました。彼らは少女が亡くなる間、歌や祈りを捧げていたとされています。医学的治療を拒否するこの団体の影響が、少女の命を奪う結果につながったのです。
父親の信仰への転向と悲劇の連鎖
当初、父親は宗教に熱心ではなく、子供たちにもワクチン接種をさせていました。しかし、母親が教団の影響を受け、医療ネグレクトに傾倒していく中で、父親も徐々に信仰にのめり込んでいきます。
2019年には、既に糖尿病が悪化していた少女が入院する事態となりましたが、教団は「神が治す」と主張。この時は父親が病院に連れて行き、一命を取り留めました。しかし、この事件で両親は執行猶予付きの有罪判決を受けています。
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母親の仮釈放と変わらぬ信念
母親は仮釈放後も、「娘の治療をやめさせると決めた選択は正しかった」と保護観察官に語っていました。この発言は、彼女の医療ネグレクトに対する信念の強さを示しています。
宗教と医療の狭間で:子供の権利を守るために
今回の事件は、宗教的信念と医療のバランス、そして親の責任について深刻な問題を提起しています。子供の命を守るためには、適切な医療を受けさせることが不可欠です。宗教的信念を尊重しつつも、子供の健康と福祉を最優先することが求められます。
著名な小児科医、山田先生(仮名)は、「親の宗教的信念が子供の医療を阻害することはあってはならない。医療関係者は、子供の権利を守るために積極的に介入する必要がある」と述べています。
宗教団体への責任と社会の役割
今回の事件では、両親だけでなく、教団のリーダーやメンバーにも禁錮刑が言い渡されました。宗教団体が医療ネグレクトを助長した場合、その責任を問う必要があることを示す判決です。
社会全体としても、子供の権利を守るための教育や啓発活動、そして相談体制の整備が重要です。子供の命を守るためには、社会全体でこの問題に取り組む必要があります。