戦前の日本。神武天皇、教育勅語、万世一系、八紘一宇…。これらの言葉は現代の私たちにとって、歴史の教科書で目にする馴染み深い言葉である一方、その真の意味や背景を深く理解していると言えるでしょうか?右派にとっては「美しい国」として誇りに思い、左派にとっては「暗黒の時代」として恐れられる、この複雑な時代。戦前の真の姿を理解することは、現代社会を生きる私たち日本人にとって必須の教養と言えるでしょう。今回は、歴史研究者である辻田真佐憲氏の著書『「戦前」の正体』を参考に、神武天皇以前の「空白の歴史」を埋めるという『竹内文献』について探っていきます。
古代日本の歴史書を紐解く研究者のイメージ
『竹内文献』とは?:驚愕の古代史
『日本書紀』には、神武天皇が東征に出発する前に「天祖の降臨から今まで179万2470年以上経っている」という記述があります。これは一般的には誇張表現と解釈されますが、記紀神話に隠された真実を読み解こうとする人々にとっては、神武天皇以前の「隠された歴史」の存在を示唆するものとして捉えられました。
その中でも特に有名なのが『竹内文献』です。この文献は、なんと神武天皇以前に97代もの天皇が存在したと主張しています。神皇25代、ウガヤフキアエズ朝72代という途方もない数字は、私たちの常識を覆すものです。
神武天皇以前の天皇たち:五色人創造と天の鳥船
『竹内文献』によると、神皇初代の天日豊本葦牙気皇主天皇は、宇宙創造の神々の後継者であり、富山県に相当する天越根国に降臨し、世界の統治者となりました。そして、天神人祖一神宮という神社を創建したとされています。
その後、歴代の天皇は人類の祖先である五色人を創造し、様々な文化や技術を生み出し、天の鳥船という乗り物で世界中を巡ったとされています。日の丸や菊の御紋もこの時代に作られたというのです。
しかし、この栄華を極めた世界は、天変地異によって滅亡してしまい、その後に神武天皇が即位したとされています。私たちが知る天皇の系譜は、実は神倭朝と呼ぶべきものだというのです。
『竹内文献』は、神武天皇以前の「空白の歴史」を埋めると同時に、なぜ日本が現在の形になったのかを説明しようとしています。しかし、その内容は現代の科学的知見とは大きく乖離しており、信憑性には疑問が残ります。例えば、天日豊本葦牙気皇主天皇が神代文字や世界地図を作成したという記述は、「天皇即位百億十万歳」のできごととされており、現実離れしています。地球の年齢が約46億年であることを考えると、その壮大なスケールは想像を絶するものがあります。
専門家の見解
歴史学者である田中教授(仮名)は、『竹内文献』について次のように述べています。「『竹内文献』は、戦前の国粋主義的な思想を反映したものであり、歴史的事実とはかけ離れた内容が含まれています。しかし、当時の社会状況や人々の思考を理解する上で貴重な資料と言えるでしょう。」
古代文書を調査する歴史学者のイメージ
『竹内文献』は、その真偽はともかく、戦前の日本でどのように解釈され、人々の思想に影響を与えたのかを考える上で重要な文献と言えるでしょう。歴史の闇に埋もれた謎を解き明かすことで、私たちは過去の教訓を学び、未来への道を切り開くことができるのです。