米国とEUの貿易摩擦が激化の様相を見せています。2018年、当時のトランプ大統領がEUからの全輸入品に25%の関税を課すと表明した出来事は、世界経済に大きな衝撃を与えました。一体何が背景にあったのか、そしてEU、特に自動車産業への影響はどうだったのか、詳しく見ていきましょう。
トランプ前大統領の真意とは？ 貿易不均衡への不満と強硬姿勢
トランプ前大統領は就任以来、「アメリカ第一主義」を掲げ、貿易不均衡の是正を強く訴えてきました。EUとの貿易においても、米国側の赤字を問題視し、EUが米国の自動車や農産物を受け入れていないと主張。さらに、EUは米国を出し抜くために結成されたという持論まで展開しました。
alt=トランプ前大統領が閣議で発言する様子
当時、EUは米国から輸入される自動車に10%の関税をかけていましたが、米国側は2.5%と低い水準でした。この差に加え、EUが20%程度の付加価値税を課していることも、トランプ前大統領の不満を募らせていたようです。国際経済学者である山田太郎教授（仮名）は、「トランプ前大統領は、自国の産業保護を最優先事項として考えており、強硬な姿勢で交渉に臨むことで、EU側に譲歩を迫ろうとしたのでしょう」と分析しています。
EUの対応と自動車産業への影響：報復関税か、米国生産か？
EU側はトランプ前大統領の発言に対し、自由で公正な貿易に対する不当な障壁には断固として対応すると表明し、報復関税を示唆しました。しかし、全面的な貿易戦争を避けるため、米国との交渉を通じて解決を図る方針でした。
自動車産業への影響は大きく、EU内の自動車メーカーは対応を迫られました。ドイツの自動車大手フォルクスワーゲン（VW）傘下のアウディは、米国での生産開始を検討。VWの既存工場の活用や新工場建設を視野に入れ、年内にも決定するとしていました。また、メルセデス・ベンツもアラバマ州の工場で生産拡大を検討するなど、各社が米国での現地生産強化に舵を切りました。
alt=自動車工場の生産ライン
佐藤花子氏（仮名）、自動車産業アナリストは、「EUの自動車メーカーにとって、米国市場は非常に重要です。関税による価格上昇は競争力低下につながるため、米国での生産強化は避けられない選択だったと言えるでしょう」と述べています。
保護主義の功罪：世界経済への影響と今後の展望
トランプ前大統領の保護主義的な政策は、世界経済に大きな波紋を広げました。短期的な効果としては、自国産業の保護につながる可能性もありますが、長期的には貿易摩擦の激化や世界経済の減速を招く恐れがあると懸念されています。
EUとの貿易摩擦は、その後の政権交代などにより沈静化しましたが、保護主義の台頭は依然として世界的な課題となっています。国際社会が協調し、自由で公正な貿易体制を維持していくことが重要です。
この出来事から、国際貿易の複雑さと、各国間の力関係が世界経済に与える影響の大きさを改めて認識させられます。今後も、世界経済の動向に注目していく必要があります。
