燃やしたゴミから金?都市鉱山を支える焼却灰リサイクルの驚きの実態

日本の家庭ゴミから、なんと金の延べ棒が作られているってご存知でしたか?まるで錬金術のようですが、これはれっきとしたリサイクル技術。今回は、都市鉱山を支える焼却灰リサイクルの最前線、新日本電工鹿島工場の取り組みを詳しくご紹介します。

家庭ゴミが金の延べ棒に?焼却灰リサイクルの仕組み

創業100周年を迎える新日本電工は、自治体などで焼却されたゴミの灰を資源化する事業を展開しています。茨城県鹿嶋市にある鹿島工場では、専用の電気炉で灰を溶かし、主に土木資材として再利用していますが、実はその過程で金も抽出されているのです。

溶融された金属(溶融メタル)は全体の約4%。この中に、1トンあたり平均約40グラム、最大で約90グラムもの金が含まれています。これは天然金鉱石の数十倍の含有量!まさに都市鉱山と言えるでしょう。

alt_textalt_text焼却灰溶融・資源化の概念図

電気炉で灰を溶かす驚きの技術

鹿島工場では、年間10万トンの焼却灰を処理しています。搬入された灰は、まず鉄くずなどを取り除き、乾燥させた後、電気炉に投入されます。炉内で1500度の高温で溶かされた灰は、比重の違いにより金属とスラグに分離されます。

下部に溜まった金属を取り出し冷却すると、溶融メタルが生成されます。このメタルには鉄や銅の他に、金、銀、白金、パラジウムなどの貴金属が含まれており、非鉄精錬メーカーで金の延べ棒へと姿を変えていくのです。

alt_textalt_text溶融により生成されたメタル。この中に金が含まれる。

一方、上部に溜まったマグマ状の物質を冷却すると、人工の火成岩である溶融スラグが生成されます。これは路盤材などに利用され、資源の有効活用に貢献しています。

焼却灰リサイクルのメリットと今後の展望

焼却灰リサイクルは、埋め立て処分場の逼迫という社会問題の解決にも繋がる重要な技術です。現在、日本の焼却灰の多くは埋め立て処理されていますが、その残余容量はあと20年ほどと言われています。

新日本電工の平田敦嗣工場長は、「循環経済の推進や資源の有効活用などの観点から、近い将来は全国的に溶融処理のニーズが高まるのでは」と見通しています。環境問題への意識が高まる中、焼却灰リサイクルはますます注目を集めることでしょう。

廃棄物から資源へ:パーフェクトリサイクルの実現

新日本電工は、搬入された灰を溶融処理することで、70%弱を溶融スラグ、4%を溶融メタル、3%を溶融飛灰に、残りを無害化されたガスとして排出する「パーフェクトリサイクル」を目指しています。

焼却飛灰に含まれる亜鉛や鉛も濃縮・回収し、再利用することで、廃棄物を徹底的に資源へと転換しています。

家庭ゴミに潜む貴金属:その謎に迫る

驚くべきことに、焼却灰に含まれる貴金属の由来は未だ解明されていません。新日本電工では、ICチップを組み込んだおもちゃやカード類が分別されずに捨てられていることが原因ではないかと推測しています。

私たちの何気ない行動が、思わぬ形で資源の循環に繋がっているのかもしれません。

まとめ:未来への希望を灯す焼却灰リサイクル

ゴミとして捨てられるはずだった焼却灰から、貴重な資源が生まれている。これは、まさに未来への希望と言えるでしょう。焼却灰リサイクルは、資源の有効活用だけでなく、環境問題の解決にも大きく貢献する、持続可能な社会実現のための重要な一歩です。