カンボジアに広がる特殊詐欺の闇:ミャンマーからの拠点移転で新たな脅威

東南アジアで暗躍する中国系犯罪組織による特殊詐欺の拠点が、ミャンマーからカンボジアへと移転していることが明らかになり、新たな懸念が広がっています。タイとの国境地帯であるカンボジア北西部ポイペトが新たな拠点として浮上し、各国当局の対応が迫られています。

ミャンマーからの移転劇:タイ当局の摘発強化が背景に

タイ当局は2月、ミャンマー東部ミャワディに隣接する地域で、大量の携帯電話やパソコンを押収。運転手の供述から、これらがカンボジア北西部ポイペトへ輸送される予定だったことが判明しました。ミャワディでは、誘拐された中国人俳優の救出劇以降、タイ政府が武装勢力への圧力を強化。これが犯罪組織のミャンマー脱出を促したとみられています。

カンボジア北西部ポイペトの街並みカンボジア北西部ポイペトの街並み

タイ警察と連携したカンボジア警察もポイペトで捜索を行い、特殊詐欺に関与していたとされる数百人を事情聴取。ペートンタン首相は犯罪組織撲滅への決意を表明しました。

カンボジア:摘発強化も課題山積、政府・政界との癒着も

カンボジア当局は摘発を強化していますが、犯罪組織の壊滅には至っていません。国連の報告によれば、ポイペト以外にも複数の拠点が存在する可能性が指摘されています。

癒着の闇:撲滅への道のりは険しく

さらに深刻なのは、カンボジア政府・政界と犯罪組織との癒着疑惑です。米政府は昨年、特殊詐欺に関与したとしてカンボジア上院議員でフン・セン前首相の顧問である実業家を制裁対象に指定しました。この事実は、カンボジア国内での摘発の難しさを物語っています。タマサート大学の東南アジア情勢専門家、水上祐二氏も「犯罪組織は地域の権力者と密接な関係を築いている。各国当局の真意を見極める必要がある」と指摘しています。

特殊詐欺で使用される携帯電話とパソコン特殊詐欺で使用される携帯電話とパソコン

特殊詐欺撲滅へ、国際協力の強化が不可欠

カンボジアへの拠点移転は、特殊詐欺が国境を越えた組織犯罪であることを改めて示しています。撲滅には、タイ、カンボジア、ミャンマーといった関係各国が連携し、情報共有や合同捜査を強化していくことが不可欠です。 また、犯罪組織の資金源を断つための国際的な取り組みも重要となります。