米厚生省、パブリックコメント廃止へ 透明性重視の姿勢と矛盾?国民の声はどこへ

米厚生省(HHS)が、省の運営や施策に関するパブリックコメント(意見公募)を廃止する方針を発表し、波紋を広げています。ケネディ長官が就任時に掲げた「徹底した透明性」という公約とは相反する動きに、国民の不安が高まっています。

パブリックコメント廃止の背景と理由

HHSは3月3日、省の運営、人事、公共財産、融資、助成金、福利厚生、契約など、法的義務のない問題について、パブリックコメントを廃止すると正式に発表しました。この発表は2月28日に連邦官報に掲載された文書に基づくものです。

HHSは、パブリックコメントの手続きが「省と公衆双方に負担をかけ、省の効率的な運営を阻害し、法的・政策的要請への迅速な対応を妨げる」と主張しています。また、HHSは「実行不可能、不必要、公共の利益に反する」と判断した場合、パブリックコメントの手続きを省略する裁量権を持つとしています。

alt=ケネディ厚生長官alt=ケネディ厚生長官

専門家の意見は賛否両論

パブリックコメント廃止の方針に対して、専門家の間でも意見は分かれています。ブッシュ政権下でFDA(食品医薬品局)の主任法律顧問を務めたダン・トロイ氏は、ルール作りに市民が参加することの意義は認めつつも、時間と費用がかかりすぎると指摘。今回のHHSの方針は効率性向上に繋がるとの見解を示しました。

一方、ハーバード大学法科大学院医療法・政策革新センター(CHPLI)のカーメル・シャシャール氏は、パブリックコメントを制限することは、現実社会の懸念を反映しない政策決定に繋がる可能性があると警鐘を鳴らしています。ジョージタウン大学のローレンス・ゴスティン法学部教授も、パブリックコメントの廃止は国民の信頼を損ない、法の監視を弱めることに繋がると警告しています。

市民の声を軽視?今後の影響は

HHSの各機関は、法律で義務付けられている場合を除き、パブリックコメントを実施する義務がなくなります。これまでパブリックコメントは、産業界が規制制定を遅らせるために利用されているという批判もありました。しかし、国民の声を反映する貴重な機会が失われることへの懸念も強く、今後の政策決定プロセスにどのような影響を及ぼすのか、注目が集まっています。

パブリックコメントの意義とは?

パブリックコメントは、政策決定プロセスに国民の声を反映させるための重要な手段です。多様な意見を集約することで、より良い政策の実現を目指すとともに、透明性と説明責任を高めることができます。今回のHHSの方針転換は、これらのメリットを放棄することに繋がる可能性があり、今後の政策決定の在り方が問われています。

国民の声を聞くことの重要性

政策は、国民生活に直接影響を与えるものです。だからこそ、政策決定プロセスにおいて、国民の声を聞き、その意見を反映させることが重要です。「徹底した透明性」を掲げたケネディ長官の就任時の方針とは真逆の今回の決定。国民の声はどこへ行くのでしょうか?今後のHHSの動向に注目していく必要があります。