ガソリンスタンド消滅危機:地方の暮らしを守る最後の砦はどこへ?

地方の生活を支えるガソリンスタンドが、静かに、しかし確実に姿を消しつつあります。かつてはどこにでもあった馴染みの風景が、今や存続の危機に瀕しているのです。この記事では、岐阜県関市にあるガソリンスタンド「ミヤチ」の現状を通して、この深刻な問題の実態と、地域社会への影響について探っていきます。

地域の足を守るガソリンスタンド「ミヤチ」の苦悩

ガソリンスタンド「ミヤチ」2代目社長の宮地潔さんガソリンスタンド「ミヤチ」2代目社長の宮地潔さん

岐阜県関市で60年以上、地域住民の生活を支えてきたガソリンスタンド「ミヤチ」。常連客の高齢者の方々は、「車がないと生活できない」「長年お世話になっている」と口を揃えます。公共交通機関が乏しい地方では、車は生活必需品。ガソリンスタンドはまさに生活のライフラインなのです。しかし、そんな「ミヤチ」も経営難に直面しています。2代目社長の宮地潔さんは、4200万円もの赤字を抱え、今後の経営に不安を募らせています。

価格競争の激化と需要減少のダブルパンチ

1955年創業のミヤチ1955年創業のミヤチ

1955年に創業した「ミヤチ」は、かつては4店舗を展開するほど繁盛していました。しかし、近隣ガソリンスタンドとの熾烈な価格競争や、車離れ、燃費向上によるガソリン需要の減少など、時代の変化とともに経営は悪化。現在は1店舗のみの営業となり、厳しい状況が続いています。「仕入れ値より安く売らざるを得ない時もある」と宮地社長は嘆きます。大手石油元売会社との取引条件の見直しや経営効率化など、様々な対策を講じているものの、抜本的な解決策は見出せていません。

全国的なガソリンスタンド減少の波

全国のガソリンスタンド数の推移(出典:経済産業省)全国のガソリンスタンド数の推移(出典:経済産業省)

経済産業省のデータによると、1994年度には約6万カ所あった全国のガソリンスタンドは、2023年度には半数以下に減少。この減少傾向は地方で特に顕著であり、「ガソリンスタンド過疎地」と呼ばれる地域も増加しています。宮地社長も、「周りのガソリンスタンドが次々と閉店していくのを見るのは辛い」と語ります。自動車整備士の育成にも力を入れてきた「ミヤチ」のような地域密着型のガソリンスタンドの減少は、地域の安全安心、そして生活インフラの維持という観点からも大きな損失です。

持続可能なガソリンスタンド経営の未来とは?

ガソリンスタンドの減少は、地方の生活基盤を揺るがす深刻な問題です。「エネルギー供給」「地域経済の活性化」「雇用創出」など、ガソリンスタンドは地域社会にとって重要な役割を担っています。持続可能なガソリンスタンド経営を実現するために、行政による支援策の拡充や、地域住民の理解と協力が不可欠です。「モビリティの未来」を真剣に考え、新たなビジネスモデルの構築や地域連携の強化など、多角的なアプローチが必要とされているのではないでしょうか。 全国のガソリンスタンドが直面する課題は、まさに日本の未来を映し出す鏡と言えるでしょう。