2025年12月8日、高市早苗首相が衆議院本会議で「国内主食用、輸出用、米粉用など『多様なコメの増産』を進める」と発言し、国内外で大きな注目を集めています。この発言は、コメ価格の動向に大きな影響を与える可能性があり、一部からは価格下落への期待も寄せられています。しかし、キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は、この「増産」という言葉の裏に隠された真の意図に警鐘を鳴らしています。山下氏によれば、これは増産に見せかけた実質的な減反強化策であり、結果的にコメの価格は高騰する可能性があると指摘しています。本記事では、高市首相の発言の背景と、専門家が指摘するその潜在的な影響について深掘りします。
「増産」報道の裏に潜む「減反」の実態
毎日新聞は12月8日、高市首相のコメ政策に関する発言を報じ、石破政権からの方針転換であるとの見方を払拭する狙いがあると伝えました。しかし、この「増産」という言葉は、額面通りに受け取ることができません。鈴木農水大臣や農林族議員が頻繁に用いる「需要に応じた生産」という表現は、実は現在の減反政策を推進するための隠れ蓑に過ぎないというのが山下氏の見解です。これは、単に生産量を増やして価格を下げ、輸出を促進するという単純な話ではありません。
農林水産省が国民を欺く際に使う「需要に応じた生産」という名の減反政策は、その実態を理解することが重要です。この政策は、コメの生産量を意図的に抑制することで、市場価格を維持、あるいは上昇させることを目的としています。
主食用米の減産方針と価格への影響
現在の減反政策は、本来1000万トン生産できる主食用コメを300万トン減産し、700万トンに抑えることを目標としています。この減産により、市場における主食用コメの供給量を制限し、その結果として米価を大幅に上昇させることを目的としているのです。実際に、鈴木農水大臣は来年産の主食用コメを30万トン以上減産する方針を表明しており、この計画が実行されれば、主食用コメの価格が下がることは期待できません。
高市首相の発言における「多様なコメの増産」は、主食用以外のコメ(輸出用、米粉用など)の生産量を増やすことを指していると解釈されます。しかし、これは主食用米の減産方針とは別の次元の話であり、全体のコメ生産量を増やすことで「増産」という印象を与えつつも、消費者が日常的に食する主食用米の価格は維持、あるいは上昇する可能性が高いとされています。農水省や農林族議員は、この「需要に応じた生産」という減反政策を法律に明記しようと動いています。さらに、コメ券の発給も、需要を増やして市場の過剰供給を緩和し、米価を維持する狙いがあると見られています。主食用コメの生産を増やして米価を下げるという方向性とは相容れない動きと言えるでしょう。
2025年12月8日、衆議院本会議で、野党議員の質問に答える日本の高市早苗首相
農政に詳しくない高市首相が、農水省や農林族議員によって意図的に誤った情報を提供されている可能性も指摘されています。首相の答弁は農水省が作成したものであり、本来であれば財政負担の増大につながる政策に対しては財務省が待ったをかけるべきです。しかし、新政権発足直後という背景もあり、財務省が介入しにくい状況にあることも、この政策が推進される一因となっているのかもしれません。
結論:コメ政策の真意を見極める必要性
高市首相の「多様なコメの増産」発言は、一見するとコメ価格の安定や下落を期待させるものに見えますが、専門家の分析からは、それが既存の減反政策を強化し、主食用米の価格高騰につながる可能性が指摘されています。農水省が用いる「需要に応じた生産」という言葉の裏に隠された意味を理解し、コメ政策の真の意図を見極めることが、消費者にとっても農業関係者にとっても極めて重要です。今後の政府の動向とコメ市場の変化に引き続き注目していく必要があります。





