「事務官、ただの公務員」「事例知り逃げられると…」 逃走続出の背景





被告の男が護送車両から逃走した現場付近=9日午前11時14分、大阪府東大阪市(恵守乾撮影)

 大阪地検岸和田支部での逃走事件からわずか10日、またしても大阪で同様の逃走事件が起きた。岸和田での逃走事件を受け、地検では幹部が収容担当の職員に口頭で注意喚起したばかり。なぜ、こうした事件が相次いでしまうのか。

 「何も訓練されていない検察事務官は、ただの公務員と同じ。警察官のように訓練は受けていないからだ」。元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士はこう話す。

 一般的に、被告の収容を担う検察事務官らは、抵抗する相手を取り押さえる訓練は受けておらず、装備も不十分とされる。今回の事件でも男女3人の事務官が被告の対応にあたったが、「人数的に少ない」(若狭弁護士)。暴れたり、逃走したりする可能性のある被告の収容について「事務官だけでの対応には限界がある」とし、警察官が常に同行するなどの制度改革が必要と訴える。

 6月、窃盗罪などで実刑が確定し、横浜地検小田原支部が収容を担当した男が神奈川県愛川町で包丁を振り回して車で逃走したケースをはじめ近年、保釈後に被告が逃走する事件は目立つ。

 甲南大法科大学院の園田寿教授(刑法)は「(被告が)こうした事例を知り、『この程度なら逃げられる』という感覚を与えてしまっているのかもしれない」と分析する。

 一方、平成21年に導入された裁判員裁判などを背景に、裁判所は近年、被告の保釈を広く認める傾向を強めている。司法統計によると、全国の地裁で保釈が認められた割合は20年の約15%から30年は約30%に倍増。裁判所の保釈判断が適切だったのかも問われることになりそうだ。



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