日本の理系分野、特に工学分野における女性の少なさは長年の課題です。根強いジェンダーバイアス、「リケジョ」という言葉の流行など、女性が理系分野へ進むことを阻む壁は未だ高いのが現状です。そんな中、奈良女子大学が2022年に工学部を新設。女子大における工学部の誕生は、日本の理系教育に新たな風を吹き込んでいます。
奈良女子大学工学部:誕生と躍進
「受験生が集まるだろうか…」という当初の不安をよそに、奈良女子大学工学部は初年度の前期試験で4倍を超える志願倍率を記録。東北や九州からも学生が集まり、現在約150名が学んでいます。この成功の背景には、一体何があったのでしょうか?
アメリカの工科大学に学ぶ:社会貢献への意識
奈良女子大学は工学部設置にあたり、アメリカの工科大学2校を参考に調査を行いました。これらの大学では、学生の男女比がほぼ1対1。「工学は人と社会のためにある」という理念が、多くの女子学生を惹きつけていることがわかりました。
奈良女子大学のキャンパス
1年次は専門を決めない:幅広い学びの機会
高校生の「工学で社会貢献したい」という思いに応えるため、奈良女子大学工学部は1年次で専門分野を決めないカリキュラムを採用。一般教養や理工系分野を幅広く学ぶことで、学生たちは自身の強みや興味を発見する機会を得ます。自己プロデュースの授業や社会人によるコーチングプログラムなども用意され、女性エンジニアとしての成長をサポートしています。
奈良女子大学 藤田盟児教授
在学生の徳田仁美さんは、「女性がエンジニアとして輝くための学びがたくさんある」と、このカリキュラムのメリットを語っています。
女子大の使命:萎縮しない学びの場を提供
藤田盟児教授は、「周囲から工学部進学を反対された学生も多い。そうしたハードルをなくし、萎縮せずに学べる場をつくるのが女子大の使命」と強調します。
奈良女子大学 藤田盟児教授
芝浦工業大学の取り組み:女性比率3割を目指す
かつては男性中心だった芝浦工業大学も、女性比率3割を目標に改革を進めています。私立女子高との協定、出張授業、インターンシップの実施など、女子学生の獲得に積極的に取り組んでいます。
芝浦工業大学のインターンシップ
芝浦工業大学のオープンキャンパス
これらの大学の先進的な取り組みは、日本の理系分野におけるジェンダーギャップの解消に向けた大きな一歩となるでしょう。女性たちがそれぞれの夢を実現できるよう、更なる支援と環境整備が期待されます。